電話番号の登録を必須にしたらどうなったか

そのような流れの中で、冒頭に書いたような、電話番号登録を必須にするという措置に踏み切ったのである。インターネットは長年、匿名であるからこそ、自由な議論が可能であるとされてきた。それを考えると、大手プラットフォーム事業者がこのような措置をとるのは、大きな転換点ともなり得る。

効果は2つ考えられた。第一に、抑止効果だ。携帯電話番号を登録すれば、運営企業から個人がある程度特定されている状態で投稿することになるため、投稿への責任感はより強くなるだろう。発信者情報開示請求で、電話番号が開示される可能性も高まる。

第二に、直接的効果だ。これまでは、ヤフコメで不適切な投稿をして投稿停止措置を受けても、別のアカウントを作り直すことで、再度コメントを投稿することが可能であった。2019年からYahoo! JAPAN IDそのものにおいて、新規にIDを取得する際には携帯電話番号登録が必要になっていたが、ID取得後に登録を解除することもできたし、2019年以前から保持していたIDで新たにヤフコメに書き込むこともできた。

Yahoo!JAPANニュースページより

実名制にすると自由な意見が言えなくなる恐れも

しかし、コメント投稿に当たって携帯電話番号の登録が必須になったということは、IPアドレスを変えようと何をしようと、同じ電話番号のアカウントでは投稿停止となる。電話番号は容易に変更できるものではなく、不適切なコメントを繰り返す人を投稿欄から排除することができるわけだ。

施策のネガティブな効果としては、巨大プラットフォーム事業者による、実質的なインターネット実名制による表現の萎縮効果が考えられた。巨大な言論の場において、一民間企業の意向で、匿名性が制限されたともいえるためだ。個人の特定が比較的容易な携帯電話番号の登録によって、正当な批判までも委縮してしまうのではないかという懸念があった。

それでも筆者としては、本施策はポジティブな効果がネガティブな効果を大幅に上回ると考えており、透明性の観点から、施策の結果が明らかになるのを期待していた。