“部長待遇さん”の呆れた言い分
某大手商社を定年退職した人が、うちの会社に再雇用されたんです。最初は役職なし、と聞いていたのに、入社時に部長待遇になった。トップ経由で迎えた人なので、それなりの肩書きを付けないと申し訳ないだろう、ってことになったそうです。まあ、その辺りの事情は私たちが知ったことじゃないし、当初はランチするときのネタみたいなものでした。
ところが、顧客と名刺交換する際に、前職の名刺を出していたことがわかったんです。“部長待遇”って書いてある今の会社の名刺があるのに、「どーも、どーも」とか言いながら、退職した商社の名刺を渡していました。さすがにこれは問題だろうと上長に注意してもらいました。そしたら、その“部長待遇さん”、なんて反論したと思います?
「名刺を渡すときに、もともとはここの人間だ、って説明しているから大丈夫」って言ったそうです。
確かにうちの会社は知名度も低いし、中小企業なので、誰もが知る大企業から来た人には、プライドが許せなかったのかもしれません。でも、だからって、「私が上司です」みたいな顔をしてあいさつしてるくせに、前職の名刺を出すのっておかしくないですか?
さすがにみんな呆れちゃって、誰も話しかけなくなって完全に孤立。悪い人ではないんですけど、若手の不満は募るばかりだし、もう、わけがわかりません。
自分を大きく見せようとするほど嫌われる
部長待遇さん……かなりの大物です。指摘されてもなお、「大丈夫!」と開き直るぶっ飛び具合は、エリート会社員特有のリアクションでもあります。
常に他者と競争して生きてきたエリート会社員は、おのずと「できる人であらねばならない」と気負ってしまいがち。自分を大きく見せようとすればするほど、周囲からは呆れられ、煙たがられ、嫌われるのに、悲しいかなエリートにはそれがわかりません。
「肩書き=自分」という呪縛から逃れられず、つい、本当につい、「過去にしがみつく」という間違った対処に手を染めてしまうのです。
対処の失敗は、さらなるストレスをもたらします。このケースでは「周囲からの孤立」です。実は、宮田さんが珍エピソードを教えてくれた半年後、新情報がメールで送られてきました。
部長待遇さんが会社を3日連続で無断欠勤した、と。会社から連絡をしても、連絡がつかない。そこで、家族に連絡をしたところ、「しばらく休ませてほしい」とだけ言われたそうです。