70歳までの高年齢者の就業機会の確保が企業の「努力義務」となる中で、下の世代から突き上げられ、上の世代に翻弄される形で50代が行き場を失い、漂流している。著書『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』が話題の健康社会学者・河合薫さんは「50代は会社と自分とを切り離して捉える、意識のシフトチェンジが必要だ」という──。(第7回/全7回)

「自分がここにいること自体“お荷物”なのか?」

「よっし! 新天地で、心機一転がんばろう!」と、不本意な異動であっても、“それはそれ”と受け止める。「どうせ、片道切符だから」「どうせ、ライン外されちゃったから」とグレるのではなく、「もうひと踏ん張りがんばろう」と、自らを奮い立たせ、いざ出陣!

ところが……、新天地は想像をはるかに超えた“完全アウェー”だった。そんなとき、あなたなら、どう対処するだろうか。

「あれこれ試してみたんですが、ダメですね。っていうか、客観的に見ると、私も何もしていないと思われているんじゃないかって。私がここにいること自体がお荷物なのか? って。周りとか関係ないと思えば思うほど、気になってしまうんです」

指をさす手
写真=iStock.com/piola666
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こう切り出したのは、某大手企業に勤めていた白木さん(仮名)、50代の男性である。

役職定年、出向、そして…

白木さんは昨年、系列会社に出向になった。役職定年して、1年後の出来事だった。片道、格安切符の辞令に、「ついに用無しか……」と落胆する一方で、「新天地はリセットするきっかけになる」と、決意を新たに意気込んだ。

ところが、がんばれどがんばれど手応えがない。自分に注がれる周囲の“まなざし”に自尊心が揺らぎ、真っ暗闇の回廊に入り込んでしまったという。

「50歳の働き方」が問われる今、今回は「“まなざし”の正体」について考えてみたい。

まずは白木さんの独白からお聞きください。