終末期医療には正解がない
一般的な医療の世界では、いわゆる「標準的(理想的)な術式、投薬法」など、ガイドライン的な「正解」があります。
この病気にはこの手術が一番、この病気には点滴でこの薬をどのくらいの量使用するといった、あらかじめ定められた規定や手順があるのです。
しかし、終末期医療の世界には「これが正解」と言える一定の道筋があるようで、実はあまりありません。
たとえば、超高齢で「老衰」としか言えないような状態のとき、また認知症の末期で寝たきり、というようなときです。
病院の医師が得意とする「治療」で解決できる問題ではすでになくなっていて、いわゆる「延命処置」しかできることがない。
「治療」に反応しない段階にいる患者さんの人生にどう向き合っていくのか、多くの管につながれて意識もなく「延命」されることが果たしてご本人の終末としてふさわしいのか……。
そんなデリケートな問題と対峙するとき、医学的な「正解」はそれほど大きな意味を持ちません。
その人にとっての幸福と、医学的「正解」とはまた別の話だからです。