「老と死」は医療で解決できない
人間の四苦と言われる「生老病死」ですが、実は病院や医療で解決できるのは「生」や「病」の部分のみです。
人間にとっての自然現象である「老」や「死」の部分については残念ながら現在の高度医療をもってしても解決できません。
欧米の先進国に比して日本で病院・病床が多いのは、この「老」や「死」の部分を医療や病院に依存する度合いが大きいことが要因であるようにも思えます。
日本人の死に場所は8割が病院ですが、アメリカは4割、オランダは3割です。
療養病床の高齢患者の2分の1は入院の必要がない
自宅に帰ることもできる患者さんについて触れましたが、実はこういう状態の患者さんの入院を「社会的入院」と言ったりもします。
この言葉に正式な定義があるわけではありませんが、おおよそのイメージで説明すると次のようになります。
「入院治療の必要がないのに、家族の介護の事情だったり、介護施設の受け入れ事情だったり、いわゆる社会的な理由で退院ができないような状態」
この「社会的入院」の患者さんは、日本の病院にどのくらいいるのでしょうか。
印南一路氏の『「社会的入院」の研究』によると、一般病床に入院中の高齢患者の3分の1(約17万人)、あるいは療養病床に入院中の高齢患者の2分の1(約15万人)が「社会的入院」だったといいます。
簡単に言うと、入院中の高齢患者の多くが、治療の必要性が乏しく、医療というより介護に近いイメージの入院だということです。
高齢化が進んだ日本では、医療の形も変化しているわけです。