高齢者の貴重な人生を台無しにしている

そして同書では、「廃用症候群(寝かせきりによって高齢者の身体機能がかえって奪われること)」を問題視して、こう述べています。

「医療の必要性が小さいのに、社会的な理由で入院したり入院を継続したりすることは、(中略)高齢者の貴重な残りの人生を台無しにする可能性がある」と。

日本では廃用症候群による寝たきり(寝かせきり)の患者さんの数が非常に多いのです。

近年は回復期病床(リハビリ専門病院)など、リハビリを重視する病院も増えてきましたが、とはいえスタッフ不足などの問題があり、やはり病院では「寝かせきり(安静臥床)」の時間が長くなっていることが多いようです。

医師を辞めようと思った、とある病院での光景

私は、医師という職業を辞そうと考えたことがこれまでに2回あります。

そのうちの1つ目は、前回の記事でご紹介した、「入院医療費と病床数の関係」のグラフを見たときですが、もう1つは、私が医師になりたての頃です。

療養病院で、意識なく延命されている患者さんたちが病棟を埋めている現実を見たのです。

医療という高度で崇高な技術が、本当に人間の幸福のために使われているのか疑いたくなるような光景がそこには広がっていました。

意識なく延命されている患者さんたちが病棟を埋めていた
筆者撮影
意識なく延命されている患者さんたちが病棟を埋めていた