アメリカの肥満問題はケタ違い

そんな日本に対して、太っている人が多い国の代表がアメリカです。

アメリカは全国平均BMIが25を大きく超えています。つまりBMIが25なら「ちょい太り」どころか「かなりスリム」というべき国です。

イメージしにくいなら、グーグルの画像検索に「fatpeople(太った人たち)」と打ち込んでみてください。ケタ違いの写真がずらっと並びます。

「fatpeople」という言葉そのものは、太っている人を見下すニュアンスがあり、他人が見ている場所で使うのはおすすめできないのですが、だからこそ、あけすけに現実を見せてくれます。

「アメリカ式のダイエット」日本人はやるべきでない

そんなアメリカは、日本とはケタ違いに肥満に悩んでいる国ですので、ダイエットにもケタ違いに熱心です(それでもあの体型になるのがアメリカ式のダイエットなのですが)。

その結果、あやしいダイエット法を売り物にしていたデューク大学の教授が患者を「事実上の性奴隷」にしていたとして訴えられた例があるほどです(注3)

注3 アラン・レヴィノヴィッツ『さらば健康食神話 フードファディズムの罠』ナカイサヤカ訳(地人書館、2020年)

ダイエット本は数え切れないほど出版されています。中身はやはり、あやしいものです。

そもそも、画像検索で無数に出てくるあの人たちが日本人なみの体型になりたいと思うのが無茶ではないでしょうか?

だから、アメリカのように高度の肥満が問題になっている国では、減量手術がよくおこなわれていて、エビデンスもしっかりしているとして医師にも人気です。

元大関のKONISHIKI(小錦八十吉)さんが食事療法と減量手術で100キロ以上減らしていましたね。

それくらい強力な方法です。

大脇幸志郎『運動・減塩はいますぐやめるに限る!』(さくら舎)

減量手術というのは脂肪吸引のようななまやさしいものではありません。胃を切って縮め、たくさん食べられないようにするのです。

もちろん手術ですから、それなりにリスクはあります。100キロ減らしたいとか、それくらい強い理由があるときにはじめて考えるべき選択肢です。

日本でもやっている病院はあるのですが、日本肥満症治療学会が厳しい基準を設けて、気軽に手術をしないよう注意をうながしています(注4)

注4 「日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013年版)」

こんなふうに、アメリカで話題になっている「肥満」の問題と、日本人がいう「やせたい」の意味はまったく違います。

だから、日本人にアメリカ式のダイエットはたぶん当てはまりません。

たまにアメリカで流行りのダイエット法を日本に持ち込んで「海外ではこれが最新トレンド」などと説明する人がいますが、おろかなことです。

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