そもそもDX人材とは何かという定義が曖昧
都内の広告関連会社の人事部長は次のように語る。
「当社にはDXをやってきた人がもともと少ないので採用しても育てられるのかという問題や、本人の専門性を有効に活用できるのかという点で非常に曖昧なところがある。また、専門性に特化した人が今は必要でも数年経っても必要なのかという見極めが難しい」
さらに問題なのは、そもそもDX人材とは何かという定義が曖昧であることだ。国内のAI研究の第一人者である東京大学工学系研究科人工物工学研究センターの松尾豊教授が政府の「新しい資本主義実現会議」(5月20日)に提出した資料でこう述べている。
「いつの時代も、新しい職種は定義されていない『その他』から出ている。DX人材も20年前には『その他』に分類された、あるいは存在しなかった職種である」
その上で「DX人材とは多様な定義がある」とし、「突き詰めると、仮説思考・デジタルスキル・目的思考の3つが揃う人材ではないかと考えられる」と述べている。
「仮説思考」とは、ある課題に対してそれを構造化し、試行錯誤を繰り返しながら検証するというPDCAを回す能力のことだ。
「デジタルスキル」とは、数理的計算を駆使し、データ・AIを扱うスキル。
「目的思考」とは、やるべき必要があるものと必要のないことを明確に意識できる思考だ。