コロナ禍の日本で鬱になる人が増えている理由
飲酒運転にしても、死亡事故件数が減っているのに、飲食の翌朝の呼気チェックまで義務付けようとしている。結果的に夜の飲酒を伴う会食がけしからんということにもなりうる。
そうでなくても飲食店はコロナ禍で大ダメージを受けているのに、今回の改正道路交通法の場合は、それで客が減っても何の補償もない。コロナ禍のときも痛感したことだが、そんなに人とワイワイと酒を楽しむことが悪いことなのか?
人々のささやかな楽しみが「官」によってことごとく奪われることによって失われるもの。それはメンタルヘルスである。
これが奪われることはうつ病や自殺の増加につながる。精神神経免疫学の考え方では免疫力が落ち、がんも増えかねない。そもそも日本では死因のトップが40年以上がんであり、先進国の中でがん死が増えているのは日本だけだ。
アメリカと違って、日本はビジネスパーソンがカウンセリングを受けられる場所がほとんどない。保険の点数が低いので、精神科医が長い時間をかけての診療を嫌がるし、そもそも日本には82も大学の医学部があるのに、精神科の主任教授が私のように精神療法が専門である医学部は一つもない。精神科医がカウンセリングを習いたくても習う場がほとんどないのだ。
それを補っているのが、ガード下のようなところで職場の愚痴をさかなにほどよい量の酒を飲むことだろう。まさにピアカウンセリングと言っていい。コロナでこの機会がすっかり奪われ、うつ状態になっている人がかなり多いという調査結果も明らかになっている。
経済協力開発機構(OECD)のメンタルヘルスに関する国際調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態の人の割合は、2013年調査では7.9%だったのに対し、新型コロナウイルス流行後の2020年には17.3%と約2倍に増加しているというのだ。
もちろん、飲み会が減っただけが原因でないのだろうが、仲間と飲むことでストレスが解消される人が少なくないのは確かだ。
認知療法の世界では、善悪二元論は二分割思考といって、心に悪い思考パターンの最たるものとされているし、この手の思考をしているとうつ病になりやすいことが明らかになっている。
コロナ禍では、自粛・マスク・ワクチン=絶対善とされ、その弊害がほとんど論じられなかった。タバコ・ポルノ・飲酒は=絶対悪とされ、メリットがほとんど論じられない。どちらも二分割思考の典型的なものだ。
賢い人がバカにならないために、いいとされているものの弊害や悪いとされているもののメリットもぜひ考えていただきたい。