※本稿は、池田清彦著『病院に行かない生き方』(PHP新書)の一部を再編集したものです。
連続飲酒記録1万2806日でも元気
僕は35歳の頃から毎日酒を飲んでいる。記憶している限り、最後に酒を飲まなかったのは、1987年の2月のことだ。
この日、肝臓がんで入院していたおふくろの見舞いに行ったのだけど、しばらくして急に容態が悪くなり、そのまま朝まで付き添うことになった。だから酒が飲めなかったんだよね。もちろんその晩は酒のことを考える余裕などなかったけど、翌朝になると幸いにもおふくろは持ち直し、ほっとひと息ついたその時にふと、「ああ、昨日は酒を飲まなかったなあ」と気づいたわけだ。
それ以来、今日まで酒を飲まなかった日は一日もない。連続飲酒記録はすでに35年1カ月以上、日数に換算すると1万2806日以上続いている。最近は、この記録を伸ばすことに意地になっているような気がしないでもないのだけれど、記録が伸びているということは、ずっと健康に過ごせているということの証でもある。自分で言うのもなんだけれど、これはなかなかすごいことではないかと思う。
毎日飲むといっても、60歳を過ぎる頃からは大量に飲むことはなくなった。350ミリリットルの缶ビール1本に日本酒少々、ワインを少々、焼酎を少々、という程度だからたいした量ではない。日本酒に換算すれば2~3合というところだろう。それくらいの量は、僕の体のアルコール分解能力の範囲内に十分収まっていると見えて、二日酔いはしたことがない。
それなのに、「週に2日は休肝日を作ったほうがいい」などと、わざわざ助言をしてくる人がいる。僕は滅多に医者には行かないが、行けばそういう話になりかねない。だから自分のほうから酒の話をすることはない。医者に聞かれても、のらりくらりとかわすようにしている。
おせっかいな助言をしてくる人や医者は、口を揃えて「体のためですよ」などと言ってくる。でも、毎日飲んでいたって体に不調はないんだから、別に問題はない。
むしろ、酒があるおかげで元気でいられると僕は自認しているし、もっといえば僕にとって酒を飲むことは生きることなので、それを制限されてしまったらストレスを抱える可能性だってあるし、寿命が縮まってしまうかもしれないんじゃないかと思うくらいだ。