自分の体で判断しよう

自分の体にとって、何がよくて何がダメなのかを最終的に判断する基準は、医者とかメディアとかが引っ張り出してくるデータなんかじゃない。だって自分の体の一番の専門家は自分なんだから。それなのに、世の中の平均値ばかり気にして、自分の体で本当に起きていることにあまり目を向けない人がびっくりするほど多い。

自分の体からのSOSが出ていないのなら、医者になんと言われようと無理してそれに従う必要なんかない、と僕は思っている。もしもタバコをやめた時と同じように「このまま飲んでたらそのうち死ぬな」と感じたり、明らかに酒が原因の病気になってしまったら、さすがにやめるかもしれないが、とはいえ僕はもう33歳ではない。好きなものを我慢してまで長生きしたいかと言われたら、そうでもない気もする。

実は養老さんも、2020年の夏に心筋伷塞を患って一時入院し、その際に軽い肺気腫も見つかったので、タバコはやめるようなことを言っていたが、2021年の夏に会った時にはまた吸い始めてたよ(笑)。

多少、体にガタがくるとしても、うまいと感じているうちは好きな酒を飲み、適当なところで死んだほうが、無為に長生きするより幸せだ。そんなことを考えながら、僕は今日もうまい酒を飲む。

日本人夫婦で乾杯するビールグラス
写真=iStock.com/JohnnyGreig
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ストレスのほうが体に悪い

健康診断というものも、僕はもうかれこれ20年近く受けていない。他人のデータと比べられて、その平均値から外れているからって、ごちゃごちゃ言われるなんて冗談じゃない。

風邪をひいてうっかり医者に行った時、「一度くらいはやっといてください」としつこく言われてしまい、渋々血液検査に応じたことがあるのだけど、すぐにそれを後悔した。僕のHDLコレステロールの値が160mg/㎗くらいあって、検査技師が「こんな人は見たことがない」と言ったようだ。男性の基準値だと上限が86mg/㎗だから驚くのは当然かもしれないけど、見たことがないと言われてもねえ(笑)。

そもそもHDLコレステロールというのはいわゆる善玉コレステロールなので、数値が多少高くても特に問題はない。でも、検査技師や医者にとっては、「平均から大きく外れている」ことは大問題らしく、「もしかしたらお酒のせいかもしれないから、2週間断酒して、そのあと、再検査しましょう」なんて言ってきた。

それで数値が下がれば「数値が高いのはお酒のせいだから、これからもっと控えましょう」などと言い出すに違いない。健康上の問題はないのに、なんで数値を下げるだけのために、食生活を改めなきゃならないのか僕にはさっぱりわからない。

それから医者には行っておらず、もう5年以上が経過しているが、特に数値を下げるための努力など何もしていないから、おそらくHDLコレステロールの値は相変わらず高いままだろう。それでも、この通りピンピンしている。

もしも医者の言いなりになって生活を改めていたら、数値は正常の範囲内に収まったかもしれないが、酒が飲めないストレスでむしろ別のところで具合が悪くなっていたかもしれないよね。痛風持ちの知り合いは、尿酸値が上限値ギリギリの時に痛みが一番出て、上限値を少し超えると痛みがすっとなくなるらしい。でも、上限値をちょっとでも超えたらすぐに数値を下げる薬を飲まされるから、結局、痛みが増すのだそうだ。わざわざ薬を飲んで“正常値”にしたら具合が悪くなったなんて悪い冗談みたいな話じゃないか。