日本でAV鑑賞ができなくなる日

今国会では「AV(アダルトビデオ)出演被害防止・救済法案」なる法案が審議されている。年齢や性別にかかわらず、法律施行から2年はAV公表から2年(その後は1年)は、出演者などが無条件で契約を解除できるようにすることなどが柱になっている。

出演強要の被害を減らす、という趣旨の法案に、精神科医である私も大賛成だ。

というのは、出演強要の被害を受けた人の相談にのったことがあるからだ。話を聞く限り、AVの撮影というよりレイプだった。その人には症状が出ていなかったが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状が出てもおかしくない深刻な内容だった。

その意味では、この法律は手ぬるい気さえする。一応、事業者に対しては罰則規定が設けられているものの、仮にだまして出演させても「3年以下の懲役・300万円以下の罰金」というレベルであり、レイプとは認定されていない。もちろん、男優が強制性交罪でつかまる話にもなっていない。

ただ、この法律について、別の角度から批判が出ている。

この法律ができることで、「カメラを回すことで性交を伴う契約を合法と認めることになる」「性売買の合法化につながる」といった反対の声が上がっているのだ。

実際のところ、警察の見解ではAVでの性行為を合法とは認めていないという。AV監督の代々木忠氏と対談したことがあるが、モザイクは性器を隠すためだけでなく、性行為をやっているかどうかわからなくする目的でもあるそうだ。

2013年11月28日、大阪の日本橋にあるアダルトビデオショップ
写真=iStock.com/winhorse
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海外では無修正の本番行為を映したものが合法なのに、日本では本番行為のあるAVそのものが許されないものになりかねないわけだ。

また前回問題にしたように、警察の対応も最近になって急に厳しくなり、海外で合法のポルノ動画をDVDにして焼いた業者の摘発(刑法175条に規定される犯罪のため)が続き(客はほとんど高齢者だといわれる)、また無修正のサイトへの投稿者の摘発も続いている。