11月19日、福島県で97歳の男性が6人を死傷させる自動車事故を起こした。一部SNSでは「高齢者の自動車免許を取り上げろ」と非難が相次いだ。が、精神科医の和田秀樹さんは「免許返納した6年後の要介護率は約2.2倍に増えるとの調査結果があり、現在約500万人の要介護高齢者が700万人に増えれば公的介護費用が年間4兆円増えるとの試算もある」という――。
運転中のシニア
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97歳男性の自動車死傷事故…再び強まる免許返納圧力

福島県下で有名な歌人として知られる97歳の男性が11月19日に、軽自動車で暴走事故を起こして、歩行者ら6人を死傷させた(男性は自動車運転処罰法違反:過失致死の疑いで逮捕)。

その事件後、サッカーのワールドカップで日本の快勝が続いたせいか短期集中的にそのニュースがテレビで流されることはなかったが、それでも「また、高齢者か」「いくらなんでも97歳で運転は……」と思った人はかなりいたようだ。私の周りでも「さすがに97歳なら免許を返納すべき」という声が聞かれた。

社会学者の古市憲寿氏も21日、フジテレビの朝の情報番組「めざまし8(エイト)」でこう述べた。

「例えば15歳の人というのは、どんなに運転がうまく、どんなに運転がしたくても四輪自動車を運転できないわけですよね。運転免許の仕組みって下限が設定されているわけで、それと同じ理屈で上限があってもいいと思う。それが80か85か分からないですけど、ある程度、基準を設けてあげた方が結局本人や家族にとっても、こういう事故を防げるケースが増えると思う」

ただ、統計数字を見る限りでは16~24歳の人のほうが事故は多い。令和3(2021)年度の免許所有者10万人当たりの事故件数は16~19歳が1043.6件と飛びぬけて多く、次いで20~24歳の605.7件、85歳以上の524.4件が多いことを警察庁も発表している。

死亡事故に限れば、免許所有者10万人当たりの事故件数は16~19歳が4.49件で、80歳以上は8.35件となっている。

高齢者の数値が際立っているが、これは高齢ほど事故を起こした際に自分が死ぬことが多くなることに起因している。75歳以上の高齢者の死亡事故については車両単独事故(いわゆる自爆事故)が約4割なのに対して、人をはねる事故は2割未満だ。その一方、75歳未満では人をはねる事故が約4割で車両単独が約2割と、逆転している。

統計数値を基に、「危ない人から免許を取り上げる」というのなら、日本では免許の取得開始年齢を24歳に上げないといけない。