相手にとって良き相談相手になりたいと思われる方は、「自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする」という基本姿勢をぜひとも肝に銘じていただければと思います。

部下に答えを教えず、考えさせる指導は「放置」になり得る

2つ目の基本姿勢として「自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする」とお伝えしましたが、悩みに向き合う時は、ただ相手の悩みに耳を傾ければいいということではありません。それだけでは、相手の悩みの本質をつかむことはできないからです。

基本姿勢③相手の悩みを自分事として捉え、相手以上に相手の悩みに向き合う

そこで、最後の3つ目の基本姿勢「相手の悩みを自分事として捉え、相手以上に相手の悩みに向き合う」ことが必要になります。おそらくこれが3つの基本姿勢の中で、最もユニークなものでしょう。

この3つ目の基本姿勢は、「どうすれば部下が自分の頭で考え、自律自走してくれるようになるのでしょうか……」と考えがちな上司へのアンチテーゼでもあります。

もちろん、ひたすら上司からの指示を待っているだけの部下に、この基本姿勢で向き合うのは難しいと思います。

ただ、心底悩んでいる部下が感じているのは、「『答えを教えず、考えさせる指導』もありがたいのですが、それを大義名分に、実際はただ放置されているだけのような気がします……」ということです。

心理学には、「自分は自分、相手は相手。相手の課題には踏み込まない」といった「課題の分離」という考え方があります。「相手の課題を抱え込んでしまうことは、自分の人生を重く苦しいものにしてしまう」。そのような想いが背景にあるのだと思います。

実際に私も、相手の悩みを自分事として悩むことで、どっと疲れてしまうことがよくあります。しかしそれ以上に、相手の悩みに向き合うことで得られるものがたくさんあることを知っているので、私は「悩みを欲しがる」のです。

写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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悩みはリアルな一次情報があふれる宝庫

もちろん、それで自分の身を滅ぼしては元も子もありませんが、悩みは情報の宝庫です。

組織マネジメントにおいては、「一人ひとり」の悩みに向き合えば、「チーム全体」の課題が見えてきます。またその課題を乗り越えるためのヒントも、個々人の悩みの中にあります。

また、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私のように老若男女問わず、あらゆる人の悩みに日々向き合っていると、社会全体の課題が見えてきます。