ユニクロはフリースを異例の安さで売り始めた

価格設定における3つの視点を押さえたうえで、特別な狙いを持った価格戦略についていくつか紹介していこう。

新しいプロダクトを発売する際、あえてライバルよりも大幅に安い価格に設定することで、市場のシェアを一気に獲得し、顧客を奪い取り、後追いしてくるライバルを突き放す戦略がある(市場浸透価格)。これは、利益よりも市場シェアを重視し、「まず一気に顧客の心を掴みとる」ことを狙うものだ。

低価格で一気に市場シェアを獲得した成功例として、ユニクロのフリースがある。それまでフリースという商品は、アウトドア用品ブランドが登山・野外用に開発、販売するもので、1万円を超えることも珍しくなかった。それを、街中で気軽に着られるように、1900円という異例の安さで商品化したのが、ユニクロのフリースだった。

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1998年のユニクロ原宿店のオープン時には、1階のすべてをフリース売り場にするほど、目玉商品として強力に展開した。「フリースに自信あり。」というキャッチコピーのテレビCMも効果を発揮して一大ブームを巻き起こし、初期のユニクロの飛躍を支える、大ヒット商品となったのだ。

広めたい商品は「まず安く売る」

2010年の創業以来、急成長を続ける中国の家電ベンチャー・シャオミの製品も、圧倒的なコストパフォーマンスを武器に、世界中で支持を集めている。シャオミは幅広いスマート家電を展開しているが、中でも好調なのがスマホだ。中国国内だけでなく、グローバル市場でシェアを急速に伸ばしている。すでに世界のスマホ市場で韓国のサムスン、アメリカのアップルと共にトップ3の地位を築いている。

そのシャオミが宣言しているのが、「製品の利益率を5%以下に抑え、それを超えた分はすべてユーザーに還元する」という薄利多売の精神だ。これは、顧客に対して「絶対的にお得な商品」を届けると約束していることになる。だからこそ、シャオミのスマホは、ライバルの追随を許さないコストパフォーマンスを実現し、グローバル市場でシェアを一気に伸ばすことに成功しているのだ。

一度、低価格で大々的に発売してしまうと、後から価格を上げにくいという難点はあるものの、戦略的に「広めたい商品」ならば、まず安く売ることが鉄則となる。