ビジネスは「種蒔き」と「収穫」に分けられる

ビジネスは、「種蒔き」と「収穫」の2種類に分けることができる。

永井竜之介『マーケティングの鬼100則』(明日香出版社)
永井竜之介『マーケティングの鬼100則』(ASUKA BUSINESS)

すべてのビジネスで均一に稼ぐ必要は必ずしもなく、利益は重視せずに顧客を掴む「種蒔き」のビジネスと、ごっそり稼いで収益を生み出す「収穫」のビジネスを使い分ければ良い。

100円均一ショップの商品には、100円で買うのがお得な商品もあれば、100円で買うのが実はお得ではない商品も混じっている。顧客にとってお得な「種蒔き」の商品で惹きつけ、お得ではない「収穫」の商品も合わせて買わせることで儲けている。ハンバーガーショップのポテト、ファミリーレストランのドリンクバーなどは「収穫」の商品として有名だ。原価率が低く、店にとって沢山稼げる商品になっている。

アップルウォッチは「種蒔き」の商品だ

アップルのスマートウォッチ「アップルウォッチ」は、実は「種蒔き」の商品として効果を発揮している。アップルウォッチは2015年に発売されてから、毎年のようにバージョンアップを重ねて、プロダクトの価値を高め続けている。健康管理・スポーツ・支払いといったスマート機能に加えて、アップルウォッチの特筆すべき点は、時計としてのデザインと機能性の高さにある。純粋に時計として、外装・デザインの品質が優れており、ストレスフリーな設計が徹底されている。

そもそもアップルは、すべてにおいてデザインに強いこだわりを持つ企業だが、アップルウォッチの場合は特にデザインにこだわる必然性が大きい。それは、アップルの視線の先には「ヘルスケア・ビジネス」があるからだ。アップルは、アップルウォッチを装着した人の健康データを活用して、ヘルスケア・ビジネスを強化していくことを宣言している。アップルウォッチを腕に着ける人々の健康データは、同社のビジネスの貴重な資源となるわけだ。だからこそ、情報収集端末を腕に着け続けてもらうために、アップルウォッチは快適性にこだわったデザインと、装着感を徹底的に追い求めたプロダクトになっている。

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