人気ブランドがとれる「まず高く売る」戦略

今度は逆に、あえてライバルよりも高く売ることで、大きな利益を生み出し、早い段階で開発コストを回収する戦略を紹介しよう(上澄吸収価格)。この戦略は、価格にこだわりが薄く、プロダクトへの愛着が強いファン層を最初のターゲットとして販売する。ある程度普及が進んできてから値下げを行い、より広いターゲットへの普及を狙うものだ。

黒板に描かれた右肩下がりの棒グラフ
写真=iStock.com/takasuu
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企業にとっては、安さに惹かれる顧客よりも、商品の価格が高くても買ってくれる顧客の方が基本的に優良顧客となる。価格が高くても、いち早く手に入れたいと願うファンがいる人気ブランドほど、「まず高く売る」という選択肢を持つことができる。一見すると上から目線の殿様商売のように思えるかもしれないが、これもブランド価値を確立するメリットの1つと言えるだろう。「まず高く売る」ことによって、高級なブランドイメージを作ることができるが、価格が高すぎたり、ブランド価値や差別化が弱すぎたりすると成り立たない戦略でもある。

人気ゲーム機の新商品は「まず高く売る」が定石

人気ゲーム機の新商品は、「まず高く売る」価格戦略が採用されやすい。2011年2月に発売された任天堂のゲーム機「ニンテンドー3DS」は定価2万5000円でリリースされた。そして、発売から半年後には、実に4割減となる1万円の大幅値下げに踏み切った。これは、異例とも言える大幅値下げとなったが、まず高く売り、期間を空けて値下げする戦略は、任天堂の他のゲーム機種でも広く採用されている。

ソニーの人気ゲーム機シリーズ「Play Station(以下、PS)」でも、同様の価格戦略が採用されている。1994年にリリースされた初代「PS」は3万9800円で発売されたが、その後2万9800円、1万9800円と段階的に値下げされ、最終的には当初の半分以下となる1万5000円で広く普及していった。この方針は、次世代機のPS2以降でも継承されている。

ゲーム機だけでなく、自動車・家電・アパレルなどにも、この「まず高く売る」価格戦略は採用できる。値下げは簡単にできるし顧客にも受け入れられるが、値上げはそうはいかない。確実に人気を見込める商品ならば、「高く売る」から始めた方が得策だ。