カスタマーサービスはなぜ重要なのか。高千穂大学の永井竜之介准教授は「相談窓口は、アフターマーケティングの一つといえる。顧客の不満を取り除き、中長期的な関係を良好に築くことが大切だ」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、永井竜之介『マーケティングの鬼100則』(ASUKA BUSINESS)の一部を再編集したものです。

対応中のカスタマーサポートのオペレーター
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様々なメリットを生み出せる「アフターマーケティング」

顧客との関係作りにおいて、欠かすことのできない重要な役割を担うのが「アフターマーケティング」である。これは商品・サービスを提供した後に行うマーケティング活動のことだ。具体的には、顧客からの相談・苦情への対応や、修理・メンテナンスのアフターサービスなどが該当する。従来の問い合わせ窓口やコールセンターに加え、企業と顧客が交流できるブランドのコミュニティ・サイト、アプリ、LINEアカウントなど、アフターマーケティングの場はデジタル化によって増え続けている。

効果的なアフターマーケティングの実施は、様々なメリットを生み出すことができる。いわば、顧客が自分からニーズを伝えてくれる場であり、そのニーズに応えることで、「また買ってみよう」と思わせてリピーターにしたり、良いクチコミを生み出したりすることができる。また、ごく一部の言いがかりのような苦情に振り回されることなく、顧客の真のニーズを拾い上げることができれば、プロダクトの改善や新しいアイデアを発見することもできる。

アフターマーケティングにお金をかけるAirbnb

こうしたアフターマーケティングは、プロダクトの差別化の切り札にもなる。プロダクトの機能やデザインで差別化することが難しい分野ほど、優れたアフターマーケティングによって差別化できることが重要になる。

また、プロダクトそのものや、提供するプロセス、使用方法などにおいて失敗があったとしても、アフターマーケティングによって挽回することができる(サービス・リカバリー)。ビジネスの各プロセスにおいて、失敗を0にすることは容易ではないため、「いかに挽回できるアフターマーケティングを設計・実行できるか」は極めて重要な課題となる。

部屋を貸したい消費者と借りたい消費者をマッチングさせる新たな民泊サービスを世界中に広めたアメリカのベンチャー企業・Airbnbは、アフターマーケティングに多額の費用をかけているという。民泊サービスのプロセスで不快な思いやトラブルを経験した「泊める側」と「泊まる側」の両方に対して、航空運賃・宿泊費・修繕費・カウンセリング費用などを負担している。不満を持った利用者を放置してしまうと、悪いクチコミが増え、ブランドイメージが悪化し、利用者が減少する。こうした負の連鎖が生まれてしまうため、不満を早期に解消する重要性は高い。