顧客を仲間として考える「共創マーケティング」

顧客との関係作りを前提にしたマーケティングとして、「共創マーケティング」がある。共創マーケティングとは、顧客を仲間(パートナー)として考え、プロダクトやブランドを企業と顧客が共に創り上げていくものである。

永井竜之介『マーケティングの鬼100則』(明日香出版社)
永井竜之介『マーケティングの鬼100則』(ASUKA BUSINESS)

従来、顧客は「ターゲット」として狙うもの、あるいは「神様」のように崇めるものとされてきた。それに対して、共創マーケティングでは、「企業の提案に、仲間である顧客が反応し、さらに企業が再提案する」「仲間のアイデアに、企業が反応して開発し、仲間が改めて評価する」といった循環するプロセスを通じて、新たな価値を生み出していく。共創マーケティングの本質は、「現在の仲間」と繋がり、現在進行形で寄り添っていくことにある。

現在の仲間が「あったら良いのに」と内心で思っているニーズを拾い上げて、そのニーズを満たすプロダクトを作って届ける。そのためにはまず、「仲間」である顧客(消費者や企業)が「何に困っているのか」「何を望んでいるのか」というニーズを発見しなければならない。そうした顧客ニーズを探して見つけ、プロダクトの開発や改良に役立てる役割は、アンケートやインタビューなどのリサーチ、もしくはユーザーの生の声が寄せられるアフターマーケティングが担ってきた。

サイトやSNSを通じて顧客ニーズを拾い上げる

共創マーケティングでは、既存の方法に加えて、コミュニティ・サイトやSNSを使うことで顧客ニーズを拾い上げていく。サイトやSNSを通じて、お互いに理解を深めていくことで、企業と顧客は関係を築き、共に革新的な価値を生み出していくことができる。

2007年に業績不振を経験したスターバックスは、再生に向けた取り組みの1つとして「顧客との心の絆を取り戻す」ことを掲げた。その手段となったのがコミュニティ・サイトを使った共創マーケティングだった。コミュニティ・サイト「My Starbucks Idea」を開設し、消費者から「あったら良いと思う」商品やサービスの希望アイデアを募集した。コミュニティには、7年間で19万件ものアイデアが寄せられ、その中から新メニューや、商品を割引する新サービスなど、300を超える商品・サービスが実現された。スターバックスは顧客との心の絆を取り戻し、再成長を続けている。

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