鶏から骨を取り外すロボット「トリダス」
アフターマーケティングを通じて、顧客から「頼られる存在」になることで、新しいビジネスのチャンスを掴むこともできる。顧客からの信頼を得て、本音を言ってもらえる関係が築ければ、「現在のビジネスを改善するヒント」や「次のビジネスを新たに生み出すヒント」を見つけることができるからだ。
「本当はどう思っているのか」「どれくらい満足しているのか」「どこに不満を感じているのか」といった顧客の本音は、企業が喉から手が出るほど欲しい情報だ。それを、顧客側から自発的に教えてくれる関係を築くことには、大きな価値がある。
業務用冷凍・冷蔵装置の分野で国内トップシェアの前川製作所は、アフターマーケティングで拾い上げた顧客のニーズから、まったく新しいプロダクトを開発し、市場を開拓することに成功した。それが、全自動脱骨ロボット「トリダス」だ。
顧客からの一言で、開発を再開した
トリダスが開発される以前、鶏の骨付きもも肉から骨を取り外す作業は、すべて手作業で行われていた。この作業は重労働で、長時間続けていると手首を痛めてしまうことが作業員の長年の悩みになっていたという。前川製作所の営業担当者は、自社にとっての最重要顧客である食品加工工場に足を運び、納入した製品の確認と共に、雑談の中から、この脱骨作業の悩みを拾い上げた。食品加工ロボットの開発・製造は同社にとって未知の領域だったが、「顧客の困りごとを解決するためにやってみたい」「自動化できれば、世界初のロボットになれる」という思いから、開発をスタートさせた。
担当者自身が鶏肉加工工場で解体作業を観察・経験し、4年がかりで1号機を開発したが、まだ機能に制限が多く、実用化のめどが立たないことから一度中断された。数年後、顧客からの「あの脱骨ロボットはどうなった?」という声に応じて、開発が再開されると、再び担当者が工場に通い、「肉と骨を切るのではなく、肉と骨を引きはがせば上手くいく」というノウハウを発見した。
このノウハウを基に改めて開発されたものが「トリダス」で、高い評価を獲得し、新たな市場を開拓することに成功した。トリダスは、開発された後も技術の改良を続け、プロダクトとしての価値を高め続けている。それによって世界の市場を開拓していき、新たな主力ビジネスとして成長を遂げている。