中高年の場合、多少太っていてもむしろ長生きできます。これは統計的に明らかになっているのですから、過激なダイエットに走る必要などまったくありません。「太り気味だから健康維持のためにダイエットしないと……」などと不安に思うのはナンセンス。
最近になって、東京都医師会もホームページで〈「メタボ対策」からフレイル予防へ〉という見出しのもと、高齢者はメタボを気にするよりも、フレイル(虚弱)予防を考えるよう発想を転換すべく啓蒙し始めました。
高齢者にとっては、栄養過多よりも栄養不足のほうがよほど大きな問題だ、ということです。
やせにくい体質は老化が進んだ証拠
中国・香港出身のアクションスター、ジャッキー・チェンなどの老化予防の主治医を務めている、アンチエイジング研究の世界的権威であるフランスのクロード・ショーシャ博士も、やせることを第一とはしていません。博士は、やせることよりも「食べても太らなかった時代の体」に戻すことを重視しています。私はこの点に強く賛同しています。
ショーシャ博士の方式では、「1カ月で10kgやせた」式の広告のようなやせ方はしません。いままでどおり食べていても、これ以上太らずに体重が維持されたり、少しずつやせていって理想的な体を作ったりする、それがショーシャ博士独自のメソッドなのです。
30代も半ばを過ぎると、若いころと同じように食べていると体重は増えていきます。
スポーツクラブなどでは、これを「年齢とともに筋肉の量が減って、基礎代謝が下がるから」と説明します。もちろん間違いではありませんが、ショーシャ博士は、ある種の老化現象が原因なのだと考えています。
若いころは健康に活動していた臓器や細胞の機能が低下して、脂肪をため込みやすくなるわけです。やせにくい体質は老化が進んだ証拠です。
避けるべき「体の酸化」「細胞の炎症」
アンチエイジングを実現するために、ショーシャ博士は「体の酸化」を避けなくてはいけないと主張しています。酸化によって、体は確実に古びていくのです。金属が酸化して「さび」になった状態をイメージしてもよいでしょう。
この酸化の原因になるのが「細胞の炎症」です。つまり「細胞の炎症」こそ、老化進行の原因になるといえます。私たちの細胞は細胞膜によって包まれていますが、「炎症」とは、この細胞膜に傷ができた状態です。
通常では気がつかないアレルギーを見つけ、アレルゲンとなっている食べ物を避ける。そうすれば、体の酸化が抑えられて、老化を食い止められる可能性が高まります。そのためにショーシャ博士のクリニックでは、慢性型のアレルギーを調べる血液検査をしています。