「足し算医療」でとりたい栄養素
脂肪について不安に思う人が多いですが、体脂肪を減らしすぎると、体温が下がり免疫機能が落ちることも知られています。さらに魚の脂由来のDHA、EPA(エイコサペンタエン酸)、オリーブオイルやエゴマ油などのαリノレン酸を含む油をとると、体の酸化予防や、動脈硬化の予防、脳神経細胞の活性化につながります。
脳の働きを維持するにはブドウ糖が必須なので、ある程度の炭水化物も必要です。そのため、中高年以降は朝ごはんをきちんととりましょう。適量には個人差があるのですが、肥満の人を除けば、「体重が減らないような量がその人の適量」だといえます。
また、微量物質の不足も老化につながります。主なものをまとめましたので、参考にしてください。
亜鉛 免疫システムの活性化 男性機能の維持 たんぱく質やDNAの合成、成長ホルモンの活性化に必須
(亜鉛を多く含む食品:牡蠣、カタクチイワシ、豚レバー、牛肉もも、カボチャ、焼きのりなど)
セレン 抗酸化作用 免疫システムの活性化 肝臓の保護
(セレンを多く含む食品:カツオ類、からしなどの香辛料、豚肉、牛肉)
クロム 炭水化物や脂質の代謝を助ける インスリン分泌のコントロール
(クロムを多く含む食品:あおさ、てんぐさ、あおのり、刻み昆布などの藻類、バジル、パセリなどの香味野菜)
マンガン 骨の発育に重要 糖脂質代謝や皮膚代謝などの酵素反応に必須
(マンガンを多く含む食品:香辛料やお茶に多く含まれるほか、クローブ、シナモン、しょうが、玉露、せん茶など)
「食べる楽しみ」は最高の老化予防
私は、老人ホームなどでも多くの高齢者を見てきましたが、「食べること」を大きな楽しみにしている人がたくさんいました。その行為自体が、前頭葉を刺激する快体験になっていたのです。
恋愛やギャンブルも前頭葉を強く刺激する体験ですが、50代を超えるとそうそう簡単に恋愛ができるわけもありません。ギャンブルも、日本では競馬などの公営ギャンブルかパチンコぐらいしかないのです。また前頭葉が委縮している場合、依存症のリスクも高まります。
その点、「食べる楽しみ」は、誰にでもできて、脳を活性化させる効果的な方法です。
がまん型の生活をしていると、食事も簡素になりがちです。食に興味を失い、食べる楽しさをないがしろにしていると、肉体的にも精神的にも老化を進めてしまいます。
空腹、痛み、性欲……。まじめすぎる日本人の場合、がまんは美徳であり、歳相応な健康的行為だと思われているようですが、これは「迷信」と断言していいでしょう。「欲がある」のは、「人間として活力がある」ということなのです。
節制と、食事や娯楽をおろそかにすることは、まったく異なるものなのです。