人はどうやって空腹を感じているのか
「食べる量を減らせばやせる」
誰だって知っています。でもこれができない。じつはこれは当たり前のことです。「食べる」ということは、生きる上で必須の行為。意志の力でコントロールできるものではありません。
医学的・生理学的観点から、食欲は我慢できないようにできているのです。
そもそも、「食欲」がどのように呼び起こされるのか、その仕組みを知らなければ、ダイエットはうまくいきません。敵を知らずに戦いを挑んでも失敗するだけです。
「食欲」とは、「お腹が空いた状態」です。つまり、胃の中が空っぽということです。
では、「胃の中が空っぽ」だと食欲を感じるのでしょうか?
試しにお腹がすいているときに、水をたくさん飲んでみてください。空腹感は消えましたか? 依然としてお腹はすいているはずです。つまり、お腹が物理的に体積として膨れても、空腹感は満たされないのです。
では、人はどうやって空腹を感じているのでしょうか?
食事をして胃が食べ物で満たされると、胃や小腸からホルモンが分泌され、それと同時に血糖値が上昇します。これら食後に増加するホルモンや糖などの因子が脳に働きかけて、「お腹いっぱい」と感じさせて「満腹」の状態を作っていることになるわけです。
つまり、食欲をコントロールしているのは脳なのです。そして、この脳がコントロールする「食欲」は、じつは2種類あります。
それが「恒常性食欲」と「報酬系食欲」のふたつです。
「報酬系食欲」こそ人を太らせる元凶
「恒常性食欲」とは、体の内部の環境を一定の「生きている」という状態に保つための食欲です。
たとえば、夕食を食べずに翌朝を迎えて、そのまま何も食べないで空腹が続いていたら、一日のパフォーマンスは当然落ちるでしょう。体がいつもの調子——恒常性——を保てなくなっているのです。
つまり、恒常性食欲とは「生きるための食欲」です。
もう一方の「報酬系食欲」とは、すなわち「快感を覚える」ための食欲です。
たとえばデザート付きの食事をすると、お腹はいっぱいになり、さらに深い満足感を味わう感覚に覚えはありませんか? この満足感とは、いい気持ち——つまり快感です。脳の報酬系が機能した結果です。これが「報酬系食欲」です。
みなさんも、「スイーツは別腹」という言葉を耳にしたことがあると思います。この現象は、冷静に考えてみるとお腹がいっぱいなはずなのに、「食べたい」と思ってしまう不思議な欲求であり、またダイエットを志す人からみると、意志が弱い人の典型例のように見えます。