高級和食を好む層が最初のターゲット
この20年にわたってロンドンの外食産業をウォッチしてきた筆者は、イギリスで餅アイスを一般に広めた立役者は他にもいると直感していた。97年にアメリカからやってきた高級和食レストランのNobuである。
早速Nobu Londonの広報に問い合わせてみると、思った通りの答えが返ってきた。
「Nobuはロンドンで餅アイスをデザートに取り入れた最初期のレストランだと思います。この10年間、当レストランでエグゼクティブ・パティシエを務めるレジス・キュルサンが、Little Moonsと協働して高品質の餅アイスの開発に取り組んできました」
Little MoonsとNobuには、つながりがあったのだ。
「雪見だいふく」からもコラボを依頼されていた
Little Moonsでは2010年の創業当時、国内レストランにアプローチし、デザート・メニューに餅アイスを取り入れるよう働きかけていたようだ。一般小売りに卸すようになる15年より前のことだった。Nobu Londonは最初からLittle Moonsとの強い絆を築き上げ、ともにフレーバーを開発してきた歴史があるということだ。
ロンドンのNobuグループのエグゼクティブ・パティシエであるレジスさんに話を伺ってみると、Nobu Londonで餅アイスを初めてメニューに載せたのは10年だったとのこと。
レジスさんによるとちょうどその頃、ロッテが雪見だいふく(1981年発売)のサンプルを持ってNobu Londonを訪れ、メニュー検討を依頼してきたそうだ。レジスさんはすでにLittle Moonsとのコラボを決めていたこと、またイギリス発の独立系ビジネスをサポートしたいという思いもあり断った。
「Little Moons創業者のヴィジョンには、当初から目を見張るものがあった。それで彼らと商品開発のコラボをすることにしたんだ。本当にいろいろなフレーバーを一緒に作った。彼らの商品をロンドンで初めてメニューに載せたのは、Nobu Londonだよ。今でも一緒に仕事をしているし、実は来年創業25周年を迎えるNobu Londonで餅アイスの限定フレーバーを出したいと思っていて、目下、Little Moonsと一緒に開発中なんだ」(レジスさん)
10年代に5年にわたってNobu Londonのパティシエとして働いていた友人によると、餅アイスは特に日本人以外の客に大人気だったそうだ。現在では餅アイスをデザートとして提供しているアジア系のレストランは多く、ロンドンではすでに定番メニューとして認識されている。