増産のため約5億5000万円の設備投資

急激なLittle Moons人気を受けて、一部のデパートやスーパーでしか取り扱いのなかった商品が、ブレイク後はほぼ全てのスーパーで購入できるようになった。またAmazon、Deliveroo、Ocadoなど大手宅配会社でも取り扱いがあり、全国的に入手が可能となっている。

ブームにのっかり、AldiやLidlなどの大手ディスカウントスーパーが今年の夏、独自ブランドを立ち上げて市場参戦した(2社ともに「餅ボール」と命名)。ニッチ商品だった餅アイスが、ほんの数カ月でメインストリームに躍り出ようとしている。

今年2月18日のThe Modemsの記事によると、事業に手応えを感じたLittle Moonsは餅アイスを年間7200万個まで増産するため、昨年3月の段階で350万ポンド(約5億5000万円)を設備投資したという。

今や日本のスイーツ、餅アイスの認知度はTikTokが抱えるZ世代を中心に急激に高まり、定番スイーツの仲間入りをしようとしている。

海外の先駆けはカリフォルニア発の和菓子専門店

高級紙から大衆紙を含め、今年春ごろから餅アイス現象をレポートする英オンライン・メディアは後を絶たない。日本の食文化になじみのない読者へ向けて、ほとんどの記事で「餅とは何か」という説明書きを付けていて、餅文化の普及にも一役買っている。

同時に、餅アイスは日本の文化と西洋のアイスクリーム文化が合体したものとして扱われており、特に海外における餅アイスの生みの親として知られる米企業Mikawayaへの敬意は大きい。

海外における餅アイスの製造は、カリフォルニア発の和菓子専門店Mikawayaが先駆けだと言われている。1990年代に7種のフレーバーから始まった餅アイスは、Mikawayaから派生した2015年誕生のブランド、My/Mochiへと発展。現在も米国とカナダの市場の9割を担っているという。

一方、イギリス発のブランドLittle Moonsは10年に創業された。Little Moonsが小売市場で頭角を現し始めたのは15年で、大手オンライン・スーパーや自然食品スーパーへ卸し始めたことで一般にその存在が知られるようになった。最初はバニラ風味、ラズベリー風味などイギリスで受けそうなものからスタートし、次にマンゴーやココナッツなど実験的なフレーバーも取り入れるようになった。

しかしイギリス国内の日本ファンからは、餅アイスはもっと前から知られた存在だった。和食レストランで提供されているからだ。

アジア系の簡易スーパーの棚に収まるLittle Moonsの商品。
筆者撮影
アジア系の簡易スーパーの棚に収まるLittle Moonsの商品。