気づきを与えることでは、相田作品も同じ。人生の酸いも甘いも体験したなにげない言い回しのなかに「ドキッ」、あるいは「なるほど」と感じるものがある。しかも、読む人、見る者の立場によって、感銘を受ける作品が違うのだ。

相田氏は「父は書を自分に向けて書いていたのだと思います。生活が苦しいとき、思うように物事が進まないとき、心のおもむくままに筆を振るっていました。だから、読む人の境涯に応じて、作品の発するメッセージが異なるのではないでしょうか…。その意味で国難ともいわれるいま、改めて『道』を、多くの日本人に読んでほしいですね」という。

   長い人生にはなあ
   どんなに避けようとしても
   どうしても通らなければ
   ならぬ道というものが
   あるんだな

   そんなときはその道を
   黙って歩くことだな
   愚痴や弱音を
   吐かないでな

   黙って歩くんだよ
   ただ黙って
   涙なんか見せちゃダメだぜ

   そしてなあ
   その時なんだよ
   人間としての
   いのちの根が
   ふかくなるのは