こうして金子みすゞと相田みつをの作品を見てくると、明らかな共通項があることがわかる。どちらも人間を、そしてすべての生命を受け入れているのだ。みすゞの「みんなちがって、みんないい」もそうなら、みつをの別の作品『そのままでいいがな』も人生、生命への讃歌にほかならない。
そして矢崎氏が「2人の詩と書を見ていると、誰もが読みたい、聞きたいという言葉がそこにあります。だから『あっ、みつけた』と感動するんです」といえば、相田氏は「美術館に来た中学生が『初めて見た気がしない。日頃考えていたことが、言葉になってそこにある』といっていました」と話す。
2人の発想がきわめて似ているのは、日本人の心のあり方に、それぞれの流儀で肉薄したからだろう。あるいは命と真正面から向かい合ったからといってもいい。そしてそれは、詩人の、書家の"いのち"の燃焼でもあったのだ。
東日本大震災から7カ月余り、依然として「がんばれ、東北」の声は消えない。けれども、それだけでは疲れてしまう。ときには、泣いたり、心から笑ったりしないと身が持たない。
そんなときだからなおさら、じっくりと金子みすゞ、相田みつをの言葉と向き合ってみるのもいいだろう。肩肘を張らずに、辛いときは辛いままに、うれしいときはうれしいままでいい。すると、作品と自分の心がこだまし合うのが感じられるはずだ。
(PIXTA=写真 岩崎 隆、鈴木直人=撮影)