東日本大震災直後からテレビCMで流れた金子みすゞの詩「こだまでしょうか」は多くの日本人の心に沁みた。さらに相田みつをの書もまた震災直後からネット上で若者を引きつけているという。なぜ、いま2人の言葉は日本人の心を捉えて離さないのか。

日本人の心に沁みた「こだまでしょうか」

その詩は、日本人の心に静かに沁み込んだ。いまでも多くの人たちが折に触れて、ふと思い浮かべたり、口ずさんだりしていることだろう。東日本大震災後、企業のテレビCMが減るなか、繰り返し流されるACジャパンの広告で使われた「こだまでしょうか」である。

無邪気に公園で遊ぶ子供たちの映像と詩の朗読――。そこから、人と人の関わりの大切さ、そして、復興の合言葉ともなった“絆”の重さを感じた人も少なくないだろう。

   「遊ぼう」っていうと
   「遊ぼう」っていう。

   「馬鹿」っていうと
   「馬鹿」っていう。

   「もう遊ばない」っていうと
   「遊ばない」っていう。

   そうして、あとで
   さみしくなって、

   「ごめんね」っていうと
   「ごめんね」っていう。

   こだまでしょうか、
   いいえ、誰でも。

作者は金子みすゞ。大正後期に豊かな才能で脚光を浴びたが、昭和5(1930)年、26歳の若さで世を去っている。その埋もれてしまった“幻の童謡詩人”を発掘したのが、彼女の出身地、山口県長門市仙崎にある「金子みすゞ記念館」の矢崎節夫館長だ。

「彼女の死から半世紀余り経って、3冊の童謡集、全512編を世に出すことができました。昭和59(1984)年のことです。やがて、バブル経済が崩壊。土地や金に踊らされた日本人が、ふと正気にもどったとき、みすゞの作品が世に評価されるようになりました」