お勧めとしては、「働かないおじさん」の今後も繰り返してもらいたい行動があれば、その点を声に出して感謝の意を伝えることです。

「○○さん、この間教えていただいた取引先の情報ありがとうございました」、「新しい提案の件、○○さんに教えていただいた事例が役に立ちました」など。小さなことでもいいので、やってくれたことで役に立ったことを見つけて、多少大げさなくらいでも感謝の言葉を伝えるのです。

そうすると、言われた本人は、「またやってあげよう」とか、「ああ、こういうことすると喜ばれるのか」と思い、その行動を繰り返したくなるのです。その後、「今度、こういうこともお願いできますか?」「こうしてくれると、もっと嬉しいです」と無理のない範囲で徐々に期待する方向を伝えていきます。

このように、承認欲求や自己実現欲求を満たす伝え方をすることで、相手の心を動かすことができます。

同僚や若手からも積極的に感謝の言葉を

無論、評価者である上司から褒められることも嬉しいのですが、同僚や若手から「あれよかったですよ」「助かりました」と言われたり、感謝されたりするのも心に響きます。「働かないおじさん」の行動のうち、繰り返してほしいものに関しては、積極的に感謝の意を表しましょう。

難波猛『「働かないおじさん問題」のトリセツ』(アスコム)

仮に、上司や同僚が「あの人は、何をやってもダメ」などと言って、褒める点を探そうとしない場合、どうなるでしょうか。

本人もおそらく「どうせ自分はダメなんだ」という思いにとらわれ、自発的な意欲を失っていくことになると思います。こうした心理は一般に「ゴーレム効果」と呼ばれます。ゴーレムとは、ゲームによく出てくる、意思を持たず命令が無いと動かない石人形です。

感謝の意を伝えておくと、その人の中に「自分のことを、そういう風に認めてくれている」「信頼してくれている」「評価してくれている」といった思いが醸成されます。すると、その同僚からその後、多少耳の痛いことを言われたとしても、ある程度、冷静に受け止めるようになるのです。

なぜこのような変化が起きるのか、それには人間の心理が関係しています。

人間には「一貫性の原理」というのがあり、「自分は一貫した人間でありたい」「矛盾した行動を取りたくない」と本能的に思っています。

例えば、同僚や若手から感謝されたり、褒められたりという経験を通して肯定的なセルフイメージが出来上がると、「これからも、そういう褒められる自分であり続けたい」「いい上司、いい先輩であり続けたい」と思うのです。

このような関係性を築いておくと、時に言いづらい話をしても、比較的素直に聞いてくれるようになります。

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