続く覇権争い…講談社“二正面作戦”の中身
出版社も、アマゾンが既存の流通ルートを侵食していく事態を、手をこまぬいてみているわけではない。
講談社、集英社、小学館の大手出版3社は5月、総合商社の丸紅と連携して流通事業に乗り出す方針を発表した。
年内にも共同出資会社を立ち上げ、人工知能(AI)を用いた効率的な配本や、RFID(無線自動識別)タグを活用したリアルタイムの在庫管理システムなどを提供するという。中小出版社の出版物の流通も請け負う方針で、出版界全体の書籍流通のデジタルトランスフォーメーション(DX)を担う構えだ。
KADOKAWAも、既に自社施設で印刷・製本し書店への直接配送する仕組みを導入しており、書店との直接取引で2日以内に届けるという。
いずれも、取次会社に代わる流通ルートの構築を目指すもので、アマゾンへの対抗意識がむき出しである。
アマゾンがさらに拡大するのか、出版社が巻き返しを図るのか。当分は、せめぎ合いが続きそうだ。
「アマゾンリスク」を懸念する声も
じわじわと「アマゾン化」が広がる中、中小出版社を中心に、アマゾンへの依存度は高まる一方だ。
だが、「アマゾンに任せれば、すべてうまくいく」と期待するのは早計にすぎる。
アマゾンに流通を任せるということは、出版社の生殺与奪を委ねることにほかならないからだ。
「アマゾンが書籍取り扱いの手数料を上げたら、経営が成り立たない出版社が続出する」「小規模の出版社では、アマゾンに太刀打ちできない」「地方の出版社がつぶれると、地方文化の担い手がいなくなる」など、「アマゾンリスク」を懸念する声は少なくない。
ネット通販の楽天市場に依存していた全国の小売業者が、楽天に「手数料を上げる」と言われても抵抗しにくい事態が思い浮かぶ。
アマゾンの利便性に浸り過ぎていると、気がついた時には身動きが取れなくなっているかもしれない。
だが、出版界が考えるべきもっとも大切なことは、読者目線である。紙媒体であれ電子書籍であれ、書籍や雑誌を入手する利便性が高まり、だれもが奥深い出版文化を享受できるようになることが重要だ。
出版社とアマゾンのバトルや、取次会社や書店の浮沈は、そうした視点で見つめることが求められる。