アマゾンと一線を画してきた講談社のある決断

出版界の「アマゾン化」が急速に進んでいる。

出版最大手の講談社が、「仇敵」のネット通販最大手アマゾンジャパンと、ついに“手打ち”し、取次会社(問屋)を通さずに、書籍をネット書店のアマゾンに直接納入する「直接取引」を始めたのである。

ラスベガスにあるAmazonのフルフィルメントセンター
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書籍や雑誌の流通システムは、戦後長く「出版社→取次会社→書店→読者」という強固なルートに支えられてきたが、長引く出版不況で「出版社→書店→読者」と取次会社が中抜きにされるようになり、最近は「出版社→アマゾン→読者」というネット直販へと地殻変動が起きていた。

こうした中、かたくなにアマゾンと一線を画してきた講談社が直接取引に踏み切ったことは、出版市場を席巻するアマゾンのパワーアップを示す一大事といえ、激変する出版市場のエポックメーキングな「事件」として記憶されることになりそうだ。

直接納本で読者も、出版社も“ハッピー”

「講談社とアマゾンの直接取引」は9月中旬、朝日新聞や日本経済新聞などの主要紙が「関係者の話」として一斉に報じ、明らかになった。

一連の報道によると、講談社は「講談社現代新書」「ブルーバックス」「講談社学術文庫」の3シリーズの既刊本を、アマゾンに直接納本する。

直接取引によって、出版社から読者に本が届くまでの日数が短縮されて利便性が増すとともに、出版社にとっては輸送や仲介にかかるコストを削減できるメリットがあるという。

読者も、出版社も、「ハッピー⁈」というわけだ。

一方、中抜きが固定化しかねない取次会社は「異例の事態で衝撃は大きい」と深刻に受け止めているようだ。直接取引の対象となった3シリーズは「ロングテール商品なので、在庫を抱え切れない取次会社にはもともとうまみがなく、大きな影響はない」との見方もあるが、アマゾンに対抗する牙城だった講談社の方針転換に驚きを隠せない。