大手は好調、二極化が進む出版市場

同時に、出版界の構造変化も顕著になってきた。

多くの出版社が苦しい経営を余儀なくされている一方で、大手出版社は好業績に転じているのだ。

講談社は、『進撃の巨人』のロングヒットに支えられ、20年11月期の決算は、売上高1449億6900万円(前年比6.7%増)、当期純利益108億7700万円(同50.4%増)と大幅な増収増益となり、野間省伸社長が「21世紀に入って最高の数字を出せた」と胸を張った前期決算さえも上回った。特筆すべきは、電子書籍と権利ビジネスなどの事業収入が初めて紙媒体の売上げを上回ったことで、業容転換が進んでいる実態が明らかになった。

集英社も、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』といった大ヒット作に恵まれ、21年5月期決算は売上高2010億1400万円(前期比31.5%増)と、初めて2000億円を突破。当期純利益も457億1800万円(同118.3%増)となり、大幅な増収増益を記録した。

小学館も、21年2月期の決算は、売上高こそ943億1600万円(前年比3.5%減)と微減ながら、当期純利益は56億7300万円(同44.5%増)と大幅増益となった。

出版界全体が苦境に陥っていたころとは違って、電子コミックやライツビジネスが寄与し始めた大手出版社と、デジタル化が遅れた中小出版社の二極化が鮮明になってきた。

不平等の概念
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アマゾン化でじわじわ増える「一人出版社」

もう一つ目立ち始めたのが「一人出版社」だ。

取次会社を通さず書店と直接取引を展開したことで知られる出版社ディスカヴァー・トゥエンティワンの社長を長く務めた後、21年5月に一人出版社「BOW&PARTNERS」を起こした干場弓子氏も、その一人。

従来の流通システムについて「1985年の創業時、大手の取次会社は、新興の小さな出版社には冷たかった。だから、書店との直接取引に活路を求めた」と、早くから構造的問題があったことを指摘していた。

ところが、アマゾンのネット通販や電子書籍Kindleという新たな流通ルートが生まれ、書店も直接取引に対する抵抗感が薄れたこともあって、出版環境が一変した。

このため、戦後の出版全盛期を支えた編集者たちが、退職後に「出したい本、出すべき本」を出版しようと起業するケースが少なくなく、儲けようとしなければやっていける可能性は高いという。

もっとも、アマゾンを当てにしすぎると、倉庫や発送業務が必要になって一人では手に負えなくなるジレンマを抱えることになるので悩ましい。