急成長する代替肉市場

代替肉の世界的な市場規模は、2018年で46.3億米ドル(約5150億円)、2023年には64.3億米ドル(約7152億円)に達するという推定がある(※)

アメリカでは代替肉専業企業がすでに台頭し始めている。

ビヨンド・ミートは、代替肉の企業として初めて2019年5月に株式上場した。

同社は2009年に設立された。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や俳優のレオナルド・ディカプリオ氏など著名人が出資している。アメリカで代替肉への関心が高いことへの裏返しだろう。

また、2019年3月に米調査会社テクノミックが6000業者のメニューを調査したところ、米飲食店の15%が代替肉バーガーを提供していたという。

欧米人ほど肉を食べない日本人には想像しづらいが、彼らの間では肉を食べることは、地球環境や人の健康に悪影響を与えることに直結していると思っている。こうした罪悪感を抱かせないのが、植物でできた代替肉だ。低コレステロールなど健康にもいい。

みなさんは、代替肉を食べたことがあるだろうか?

もしかして、そんなにおいしくないと感じたかもしれない。しかし現在、肉の分子構造を分析し、より肉に近くしようという開発が進んでいる。植物性プロテインやでんぷん、その他の材料を操作することで、肉の食感を徹底的に再現しようとしている。食感のみならず、焼いたときの音や焼き色まで本物の肉に近づけている。

これら、食品をテクノロジーで開発する分野は「フードテック」と呼ばれる。現実を考えれば、食文化は科学技術で下支えしなければならない。

※米調査会社のマーケッツ・アンド・マーケッツ調べ

出所=『2040年の未来予測

本物の肉を培養する「培養肉」も大注目

とはいえ、「結局は本物の肉でないと満足できない」という声はある。

そこでもうひとつ、「培養肉」というのがある。その名のとおり、肉の細胞を培養したものだ。動物の筋肉の幹細胞を取り出し増殖させる。細胞をほんの少し採取するだけでできるため、動物を大量に飼育する必要も、屠畜する必要もない。培養肉だと原理的には1年で数十トンという肉の量産が可能となる。

培養肉が広く知られるようになったのは、2013年にオランダの生理学教授であるマルク・ポスト氏が開いた培養肉バーガーの試食会だ。ちなみに、このハンバーグ1個に使われた培養肉140グラムをつくるのに33万ドルかかっていた。ハンバーガー1個が日本円にして3000万円以上だ。

培養肉はまだ実証段階で、店頭には並んでいない。しかし、確実に未来に大きな利益を生む。だから、世界中の企業が製造コストの大幅な削減を急いでいる。現時点では培養した牛肉のハンバーガーを、1000円台半ばで提供できる可能性も報じられており、2020年代前半には市場流通が始まるとみられている。