「自民党の票田である開業医を守るため、薬価が低い」
日本の薬価も不透明だとの指摘が多い。保険適用となる医療用医薬品については全国一律の公定価格である薬価が定められる。新薬の薬価設定には、「類似薬効比較方式」と「原価計算方式」の2つの方式があり、既存の新薬と類似性のある新薬を開発する場合は、前者の方式を、類似性がなければ後者の原価計算方式が採用される。
しかし、「画期性」「有用性」「市場性」という加算項目は不透明で、厚労省の恣意的な判断が影響する余地がある。製薬会社の原価構成など情報開示の程度に応じて、薬価も増減が決まるインセンティブも導入されたが、どの程度の情報開示をすべきかは製薬会社の判断にゆだねられている。
薬価を巡っては「自民党の票田である開業医を守るために、画期的な新薬を開発しても薬価が低くなり、価格が抑えられ、製薬会社の努力が報われない」(大手製薬会社幹部)という批判は根強い。
「既得権益」を打破する制度設計を急げ
これらは一例にすぎない。総務省、国交省、厚労省に限らず、規制官庁にはさまざま「権益」があり、それは一部の「族議員」と結託することで既得権益化し、民間企業の新規事業や開発力をそいできた。こうした既得権益を打破し、企業のイノベーションを促進するには、オークションをはじめとする透明性確保の施策を導入するべきだ。
昨年、米スタンフォード大学のポール・ミルグロム教授とロバート・ウィルソン名誉教授は「オークション理論の発展」でノーベル経済学賞を受賞した。米国は1994年にいろいろな種類の周波数免許を売る周波数オークションを始めたが、これより前にニュージーランドで実施された周波数オークションは、設計に失敗し望ましい結果が得られなかった。そこで制度設計に携わったミルグロムとウィルソンの両氏は、すべての競り上げが止まるまではどのオークションも開きっぱなしにする「同時競り上げ式」という新方式を開発し、13年までに8兆円を超す収益を国庫にもたらした。
オークション設計の理論構築も進んできている。官民の不透明な関係を解消し、民間の活力を引き出すためにも総務省をはじめとした規制官庁の権益を打破する制度設計が急がれている。