オークションなら7兆円以上が「国庫」に入る計算

米国では無線免許の交付などは競売(オークション)で決まる。3月には5Gのミッドバンド(3.5GHz)の無線免許を巡り、米ベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tが一騎打ちを演じた。この結果、22年から利用できるA枠をベライゾンが4兆8000億円で、23年まで待つB/C枠をAT&Tが2兆5000億円で買い取ることが決まった。こうした巨額の免許料は国庫に入り、さまざまな行政サービスに活用されることになる。

オークションに群がるバイヤーたち
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オークションが導入されて以降、免許料は高騰しており、米国内でも民間企業の経営を圧迫しすぎているとの批判はある。だが、こうしたやりとりは透明性が高い。日本のように通信業者の生命線となる無線免許が、不透明な行政手続きの中で恣意しい的に割り当てられることはない。

所管企業の生殺与奪の権利をもつ中央官庁は、総務省だけではない。国土交通省は「羽田空港の発着枠」という権限で航空業界をコントロールしている、また厚生労働省は「薬価」を決める権限で製薬業界を抑え込んでいる。

国交省は「8.10ペーパー」でANAを側面支援

2010年に経営破綻し、民主党政権下で日本航空(JAL)は再建を果たした。その後、自由民主党が政権を奪取すると、自民党は全日本空輸(ANA)の経営を後押しする。

台頭する韓国やシンガポールなどの国際ハブ空港競争を勝ち取るために羽田空港は国際線を増やした。羽田からニューヨークやロンドンなどへの直行便は「いい時間帯に羽田枠を取れるか取れないかで1便につき年間10億円単位で収益が変わってくる」(航空関係者)と言われる。

2012年12月4日、羽田空港に日本航空の飛行機とJALエクスプレスの飛行機が並ぶ
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JALは3500億円もの公的資金の投入など国の支援を受けて再生したが、ANAに対して国交省は羽田空港の発着枠を多く割くことで支援した。たとえば2014年春に運用を開始した羽田国際線発着枠はANA11便に対して、JAL5便だった。さらに国交省は2012年に「日本航空の企業再生への対応について」と題する文書(いわゆる「8.10ペーパー」)を示し、JALの新規投資や路線の開設を抑制し、事実上ANAの側面支援を行ってきた。