「ちょっと僕のクルマ、最近ガタがきててね」でいい
「首吊るような人は事務次官にはなれない」
これは大蔵省に不祥事が続発して、逮捕者や自殺者が大量に出た直後の1998年に出された、テリー伊藤による大蔵官僚匿名インタビュー『大蔵官僚の復讐』(飛鳥新社)に出てくる大蔵省キャリアの言葉である。
事務次官というのは中央省庁では「位人臣を極めたお方」という。次官になる、ならないは、「天皇になるのか、市井の人で終わるのかぐらいの差がある」(同じキャリア)ようだ。
当時の大手銀行にはMOF担と呼ばれる中堅幹部たちがいた。大蔵省との折衝や情報収集にあたるのだが、一番の役割は、彼らを接待して賄賂をばらまくことだった。
先の本で、キャリアがこう語っている。
「MOF担の仕事というのは、キャリアの趣味、生活パターンをつかむことが第一で、キャリアは『僕、オペラが好きでねえ』。これだけでいいわけですから。(中略)それは自動車でも同じで、『ちょっと僕のクルマ、最近ガタがきててね』だけでいいわけだから」
5000円ほど払うとスカートの中が見える仕掛け
大蔵省の「護送船団方式」に乗っていれば、何の心配もいらなかった時代が続いた。だが、地価の異常な高騰や株価の上昇で膨らみ過ぎたバブル景気は、大蔵省の不動産融資の総量規制に端を発して、弾けてしまう。
国民の血税を住専の不良債権処理に投じるなど、批判が高まっていったが、それでも大蔵省の接待漬け、収賄体質は変わらなかった。
だが、国民の怒りは、銀行によるキャリアたちへの「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待が、週刊誌で暴かれたことで一気に火を噴いたのである。有名だったのは歌舞伎町にあった会員制しゃぶしゃぶ「楼蘭」という店だったと記憶している。
ここには多くの若い女性がミニスカートにノーパン姿でいて、5000円ほど払うと、天井からつるされたボトルから酒を注いでくれたりする時に、スカートの中が見えるという仕掛けだった。
性的サービスがあるわけではないが、気に入った女の子がいると、MOF担に頼めば、お膳立てをしてくれたとも聞いていた。ここは表向き飲食店なので、領収書が出ることも、MOF担が使いやすかった理由である。