安倍首相は即刻、福田次官を更迭したかったが……
週刊文春(4/26号)がこの間の事情をこう解説している。当初、福田次官を買っていた安倍首相も、新潮の記事を読んで、「“安倍晋三は面白いけど、税はどうしようもない。キスしたい”って、支離滅裂だ。ほんとにくだらない会話をして、許せないね。もう麻生さんに任せるよ」と突き放したという。
安倍は即刻、福田を更迭して、この問題を決着させたかった。官邸が産経にそのことをリークしたのであろう。
だが、麻生財務相と財務省は、森友学園の文書改ざん問題についての調査が出れば誰かに責任を取らせる必要がある、それには任期が迫っている福田を辞めさせるのが得策だといい募り、官邸も渋々承知したというのである。
文春は、今号の取材時点で、新潮の情報源は、財務省担当記者の話として、「福田氏がお気に入りだったのが、フジテレビとテレビ朝日の女性記者。(中略)ただ、音源の出元については『酔っぱらって覚えていないんだよ』とボヤきつつ、『フジは違う』と言ってました」とし、「最終的に福田氏は、上司の麻生氏や官邸の杉田氏に、テレ朝の女性記者の名前を挙げた」(文春)と、特定している。
財務次官の引責辞任は「ノーパンしゃぶしゃぶ」以来
福田や財務省はこう考えたのではないか。全否定していても、新潮は取材源の秘匿があるから、どこの社か明かすことはできない。
これは推測だが、福田次官はテレビ朝日の人間から、 「うちの女性記者が『福田のセクハラを扱いたい。録音はしてある』と訴えたが、財務省とけんかをするわけにはいかないとの判断から、社としてはできないと断った」と聞いていたのではないか。
名乗り出ない以上、しらを切りとおし、セクハラ発言などしていないと百万回いい続ければ、うそも真実になると。
だが、4月18日、突如、福田次官は「辞任する」といい出すのである。
何があったのだろう。くだんの女性が、このままでは自分がやったことが隠蔽されてしまうと、名乗り出るといい出したのか、社内から、報道機関として泣き寝入りするのは許されないと、激しい突き上げがあったのではないか。
財務次官が引責辞任するのは「ノーパンしゃぶしゃぶ接待汚職事件」以来、20年ぶりである。
「報道機関として不適切な行為」か
19日未明にテレビ朝日が緊急会見を開き、週刊新潮へ音源を持ち込んだのは自社の女性記者であると発表したのである。
テレ朝によると、この女性記者は以前、福田次官からセクハラ被害を受けていると上司に相談していたが、本人が特定されることで2次被害のおそれがあることなどを理由に、「報道は難しい」といわれてしまった。
そのため女性記者は「セクハラ被害が黙認され続けてしまうのではないか」という思いから新潮編集部に連絡して取材を受け、録音した一部も提供した。
テレビ朝日の報道局長は、取材活動で得た情報を第三者に渡したことについて、「報道機関として不適切な行為であり、当社として遺憾に思っている」といったが、これに対してSNSなどで激しい批判がなされている。
自社の社員が取材先からセクハラを受けているのに、何もやらなかった彼女の上司たちこそ、報道機関にいる人間として「不適切」だといわざるを得ない。