次期戦闘機の開発は安倍前首相によって遅延を強いられてきた
防衛省は国会で審議中の2021年度防衛予算に次期戦闘機の開発費576億円を計上した。本年度予算で国際協力を視野に入れたコンセプトづくりを進めた結果、主開発企業を三菱重工業とし、その下請け企業に米国のロッキード・マーチン社を選定、これから本格開発に乗り出そうというのだ。
開発に成功すれば、世界のどこにもない最強の戦闘機となるはずだが、コトはそれほど単純ではない。国際協力の言葉からわかる通り、残念ながらわが国には戦闘機を独自開発する能力がなく、米国など航空機先進国の支援が欠かせないからだ。
それでも時の政権さえしっかりしていれば、国際協力の壁を乗り越えられるかもしれないが、その、時の政権の舵取りが危ういのだ。そもそも次期戦闘機の開発は良好な対米関係の維持を最優先とする安倍晋三前首相によって遅延を強いられてきた。
トランプ米大統領の「バイ・アメリカン」に応じてきたが…
次期戦闘機は現在、航空自衛隊が92機保有するF2戦闘機の後継機にあたる。F2は2030年ごろから退役が始まるため、防衛省は2017年から次期戦闘機の検討を始めていた。
ところが、2018年12月、当時の安倍内閣はF35戦闘機の追加購入を閣議了解で決め、次期戦闘機の前にF35が割り込む形となった。
閣議了解は「F35Aの取得数42機を147機とし、平成31年度以降の取得は、完成機輸入によることとする」との内容で、追加購入する105機のF35を航空自衛隊が保有するF15戦闘機のうち、古いタイプの99機と入れ換えることにした。
退役時期が決まっておらず、まだ使えるF15を強制的に退役させてまでF35を追加購入するのは、トランプ米大統領が主張する「バイ・アメリカン(米国製を買え)」との要求に応えるためだ。
米政府にカネを渡すため、あえて「完成機輸入による」との一文を入れたことにより、防衛省が三菱重工業などに1870億円の国費を投じて造らせたF35の組立ラインは閣議了解より前に発注した機数分の生産で打ち止めとなり、完全に停止することになった。
ここに大きな問題がある。