「政治力、技術力の差」が日本を敗者とし、米国を勝者とした

開発終了後も、米側は機体製造への参画を言い出して譲らず、日本政府から受け取る製造費は開発費と同じ割合の40%を主張。日本政府が折れて希望通りに支払った結果、約80億円で調達できる見込みだったF2は約120億円に高騰した。

エンジン1基のF2が、エンジン2基のF15戦闘機より高いのだ。見合うはずがない。防衛省は調達機数を当初予定した141機から94機に下方修正し、計画より早い2007年に三菱重工業での生産を終えた。

その一方で、日本の技術によって機体を軽量化できる炭素複合材の製造技術が米国に流れ、ロッキード・マーチン社はF22戦闘機やF35戦闘機に転用して莫大な利益を上げている。

彼我の政治力、技術力の差が日本を敗者とし、米国を勝者としたのだ。

F2の生産終了後、三菱重工業で行っている戦闘機の製造といえば、F35戦闘機の「組み立て」である。米政府が日本側に戦闘機の製造技術が流れることを嫌ってライセンス生産を認めず、部品を組み立てるだけのノック・ダウン生産にとどめたからだ。

防衛省が次期戦闘機の開発にあたり入れた1つの条件

完成後の機体は米政府の所有となり、米政府は防衛省の購入価格を米国から輸入する機体より約50億円も高い約150億円の高値をつけた。その価格差により、安倍政権で追加導入を決めた105機はすべてを輸入となったのである。

105機の追加購入が決まったF35戦闘機
写真=航空自衛隊ホームページより
105機の追加購入が決まったF35戦闘機

戦闘機を単独で製造する技術がないわが国は、米国のやりたい放題に手も足も出なかったのが実情だ。

その反省から、防衛省は次期戦闘機の開発にあたり、「わが国の主体的判断で改修や能力向上ができる改修の自由度」を条件の1つに入れた。日本で開発したり、生産したりしながら、米政府の意向で改修ひとつできなかった前例を打ち破ろうというのだ。

また、国内企業参画を目指し、国内産業基盤を維持するために「適時・適切な改修と改修能力の向上」と「高い可動率の確保および即応性向上の観点から、国内に基盤を保持しておくことが必要」とした。

米政府に主導権を握られると米側の都合が優先される。次期戦闘機が肝心なときに稼働できない事態に陥ったり、適時・適切に改修もできないようになったりしては話にならない。