王、長嶋に勝った唯一のこと

結果を求められるのがリーダーだが、目先の勝利にこだわるあまり、肝心の「人」を殺してしまっては意味がない。これは、企業も同じではないだろうか。目先の利益ばかりを優先して、本当ならこの先何年も会社を支えられるはずだった人材を潰してしまうこともあると聞く。

そうなってしまっては、チームにとっても組織にとっても、目先のプラスよりマイナスのほうがはるかに大きい。結果を残すことはもちろん大切だが、人を残すことはそれ以上に大切。いい人材を残すことができれば、結果はおのずとついてくるものだ。

野村克也・著『野村の結論』(プレジデント社)

果たして、自分の歩いた道の後に、大きく羽ばたいた後輩たちが何人いるだろうか。どれだけの才能が開花しているだろうか──。

わたしは、選手時代は王貞治を、監督時代は長嶋茂雄をライバル視していた。いまのわたしがあるのは彼らのおかげだと感謝しているが、ひとつだけ彼らに自慢できることがある。「人気では長嶋と勝負にならなかったし、記録でも王に抜かれた。でも、人を遺したということでは、ふたりに勝てたのかな」と。

だからこそ、言いたい。

その人のもとからどれだけの人材が育ち、羽ばたくことができたか。リーダーとしての価値は、最後はそこで決まると言ってもいいのではないだろうか。

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