名将・野村克也氏の三回忌を追悼し、氏が晩年に語り残した金言をまとめたセブン‐イレブン限定書籍『人は変われる 「ほめる」「叱る」「ぼやく」野村再生工場の才能覚醒術』が発売された。自らを高めようと努力を続けるすべての人へ贈るラストメッセージより、その一部を特別公開する──。(第4回/全4回)

※本稿は、野村克也『人は変われる 「ほめる」「叱る」「ぼやく」野村再生工場の才能覚醒術』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

プロ野球CS・日本ハム―楽天/両チーム選手に胴上げされる野村監督
写真=時事通信フォト
2009年10月24日、試合終了後、日本ハム、楽天の両軍選手らから胴上げされる楽天の野村克也監督(札幌ドーム)

組織はリーダーの力量以上には伸びない

「組織はリーダーの力量以上には伸びない」──これは組織論の鉄則であり、私自身、何度も痛感してきたことである。リーダーの力量、器の大きさが、組織の盛衰、浮沈を決するといっても過言ではない。

逆にいえば、組織を成長させようと思えば、リーダー自身が成長しなければならないということになる。リーダーみずからが向上心を忘れず、力量や器を伸ばし、大きくする努力を続けなければ、組織の成長もそこで止まってしまうのだ。

とすれば、リーダーたるもの、部下に求める以上に自分自身を厳しく律し、常に進化・進歩しようとする姿勢を忘れてはならない。選手が監督をよく見ているように、フォロワーはリーダーをよく観察している。リーダーが自分を甘やかし、責任をフォロワーに押しつけたり、言い訳したりしても平気でいれば、誰もついていこうとは思わない。

わずか1年で準優勝した子どもたち

そうしたことの大切さを、あらためて実感した出来事があった。ヤクルトの監督になる前、請われて港東ムースというリトルシニアのチームを指導していたときのことだ。

子どもたちは私を全面的に信頼してくれていた。それだけに、こちらもいい加減なことはできなかった。グラウンドで指導するだけでなく、自宅にも子どもたちを招き、私の経験もまじえながら、さまざまな話をした。「野球とは」をくり返し説き、「おもしろい」と感じさせるために工夫をした。

子どもたちは目を輝かせ、熱心に通ってきた。私のいうことを素直に吸収していった。その結果、それまで全国大会に一度も出たことのなかったチームが、わずか1年で準優勝するまでになったのである。

このときの経験が、信頼関係の大切さとともに、「組織はリーダーの力量以上には伸びない」という事実を、私に再認識させることになった。