野球評論家の野村克也氏が、今年2月に逝去した。84歳で亡くなった名将は「本当は50歳まで現役を続けたかった。ずっと野球のことばかりを考えて生きてきたが、それはきっと死ぬまで続くだろう。ヘタをするとあの世へ行ってからも考えてるかもしれん」と語っていた――。
※本稿は、野村克也『老いのボヤキ 人生9回裏の過ごし方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
ユニフォームを脱ぐ日は必ず来る
いくつになっても野球を続けたい。野球を生業とする者ならば、誰もがそう思っているだろう。できるところまで続けたい、体が動く限りは続けたい。
だが、そう簡単にはいかない。打てなければ、投げられなければ、選手生活を続けることは叶わない。打てない、投げられない選手を何人も雇っておけるほど球団に余裕があるわけではないからだ。成績が伴わなければ、戦力外通告を受ける。どんなに続けたいと願っても、辞めざるを得ない。
そしてもうひとつ、年齢が上がれば上がるほど、野球を続けることは難しくなる。絶好調だった頃と比べ、どうしても肉体的な衰えを感じることとなる。ピークの年齢を過ぎると、体力を回復させることさえ大変だ。ケガの予防のためにも、試合後のケアに時間をかけ、入念に行うようになると、多くのベテラン選手が口をそろえて言っている。
時代と年齢には勝てない。これはその通りだ。加齢によるさまざまな衰えには絶対に勝てない。ピークを少しでも長くすることはできるかもしれないが、それは一時しのぎでしかない。いずれはユニフォームを脱ぐ日が必ず来る。