人間本来の姿に早く戻るために
DXはあらゆる日本企業が急いで取り組まなければならない共通の課題だ。2018年に経産省が発表したDXレポートでは、既存システムの老巧化がもたらす最悪シナリオを「2025年の崖」と表現した。これは、2025年にはIT人材不足が約43万人まで拡大し、デジタルシフトが進まないと2025年以降は毎年12兆円の経済損失が発生することを意味する。
「僕らのビジョンは『誰もが価値創造に夢中になれる世界』。これが人間本来の姿だと思うんですよね。でも、『価値創造に夢中になれる世界』にはDXという課題に追われているうちはたどり着かない。その課題を解決するためのアセットが僕らにはある。だから上場して、パブリックな立場で勝負しようと思った。ライバルとかは一切いないし、日本の宿題なんだからみんなも一緒になって2025年までにDXを終わらせようよ、それで早く楽しい仕事に戻ろうよって伝えたいですね」
思考停止ワード「ただの○○じゃん」は禁止に!
「2025年の崖」を乗り越えるためには、企業活動だけでは立ち行かない。企業がDXを力強く推し進めても国民がその価値を感じないと定着しないからだ。つまりはユーザー側が「新しいサービスを体験してみよう」と小さな一歩を踏み出せるかどうかにかかっている。
「うちの母親も『ネットショッピングなんて無理』と最初は言っていましたが、一、二回使ってみたら今ではヘビーユーザーになっています(笑)」
だが、ここで立ちはだかるのが、変化を嫌う傾向にある日本社会の風習だ。
「デジタル庁の創設にしても、みんなすぐに“そんなのムリだ”とかたたき出すじゃないですか。これでは挑戦しづらいから、社会はもっと寛容にならなければダメですよ。僕が一番嫌いなのは『ただの○○じゃん』って言葉ですが、これも禁止にしたほうがいい。iPhoneは『ただの携帯電話』、テスラは『ただの車』じゃないですよね。でも、そうやってカテゴライズすると新しいものを受け入れられなくなる。この言葉を使った瞬間に思考停止するし、挑戦する人が減って進化が止まってしまうんです」