無意味だから辞めた高校「思考停止から抜け出したかった」
16歳で高校中退、ホームレスに。IT人材の雇用のためベトナムで起業。先の読めないコロナ禍に上場——。サンアスタリスクCEO・小林泰平の歩んできた道は一見突飛にうつるかもしれない。だが、本人に気負いはみられない。いずれも「思考停止」しないように選んできた道にすぎないからだろう。
「高校は無意味だから辞めて、ふつうにホームレスやっていただけですよ」
インタビューでは開口一番、そう笑いながら話す。高校中退のきっかけは当時通っていた早稲田実業の「去華就実」という校是だった。これは「華やかなものを去り、実に就く」、つまりは「外見ではなく中身を大切にしなさい」という意味だ。
「去華就実は、その裏を返せば“実があれば、見た目はどうでもいい”という意味だと僕は理解しました。それなのに生徒たちみんなの見た目はなぜ一緒なのか? 金髪でも別にいいじゃん、と。しかも、その疑問を教師に聞いても誰も答えを教えてくれない。ああ、これが教育なのかって思いました」
ルールで決められていないのに、みんなと同じ見た目があたりまえだとされる学校生活。そのことが次第に怖くなっていった。それに、生活の中心は中学からはじめた音楽活動だ。高校に通う意味がいよいよわからなくなった。
「今思うと、思考停止を迫られる高校生活から抜け出したかったんでしょうね」
1年半のホームレス生活→クラブ勤務→26歳でエンジニアへ
父親に高校を辞めたいと相談すると、その決断を尊重されながらも「好きなことをやりたいなら一人でやれ」と家を追い出される。それからはレコードのせどりで日銭を稼いでバンド活動をしながら新宿や渋谷の公園でホームレス生活を1年半続けた。
新宿のクラブに拾われると、ライブの音響を担当したりバーカウンターに立ったりしながら、好きな音楽と気の合う仲間に囲まれる生活を送った。睡眠時間は短くハードな生活だったが、「最高に楽しかった」と振り返る。
しかし、そんな楽しい生活も長くは続けられない。連日連夜のハードワークで身体を壊さないうちに就職しようと決断。履歴書を事前提出しなくて済むIT企業に応募し、エンジニアとして採用される。26歳で初めて就いたエンジニアの仕事は楽しく、のめり込んでいった。