ハイジャック頻発、そして9.11

一方で、東京条約が結ばれた後の60年代中盤から70年代にかけて、亡命希望者やテロ組織などによるハイジャックが頻発。70年には年間80件以上も発生する事態になっていました。

こうした状況を受け、70年にはハイジャック行為の厳罰化を各国に求めるハーグ条約(正式名称:航空機の不法な奪取の防止に関する条約)、翌71年にはハイジャック以外の、フライトの安全を損なうような不法行為を犯罪として規定するモントリオール条約(正式名称:民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約)がICAO主体で作成され、東京条約と同様に各国の航空法や各航空会社の運航規定に反映されていきました。

さらに世界の航空保安対策に大きなインパクトを与えたのが、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件です。この事件では4機の民間機がほぼ同時にハイジャックされ、うち3機が地上の建物に突入、残り1機も墜落。搭乗していた乗員乗客全員、および建物にいた人を含め、3000人近くの方々が亡くなられました。

事件を受けてICAOは、航空保安強化に向けたルールの見直しに着手。2002年7月には、新しい国際ルールの適用が始まりました。操縦席ドアの強化や持ち込み手荷物の検査の厳格化など、航空機内と地上の両方で大幅な安全対策の強化が行われ、そのほとんどが現在まで引き継がれています。

機長や副機長、客室乗務員はもちろん、地上スタッフも、国際的に合意されたこうした保安対策を常に意識しながら仕事をしています。彼らから何らかの指示があった場合、その背後にはたいてい安全運航を守るという意図がある。乗客のみなさんは、そのことをどのくらい理解していらっしゃるでしょうか。

写真=iStock.com/mbbirdy
※写真はイメージです

世界で年間9000件近い機内迷惑行為が発生

乗務員の指示に従わないなどの乗客による機内トラブルは、世界的に増加傾向にあります。

世界の航空会社で構成される国際航空運送協会(IATA)の調べによると、2017年の機内迷惑行為の件数は全世界で8731件。機内での喫煙やアルコール過剰摂取によるトラブルが多くを占めますが、「(携帯電話をオフにするなどの)安全上の指示を拒否する」「他の乗客や乗務員を脅したり暴力を振るう」といった事例も数多く報告され、乗務員の間では飛行中の乱気流などと並ぶ「安全運航上の懸念」として認識されています(*1)。身体を拘束されたり途中で降機させられるケース、裁判に発展するケースも少なくありません。