このところ、障害者雇用が一般に浸透し、企業に雇用される障害者の数は年々増加しています。

障害者雇用の対象になるのは、障害者手帳を取得している人です。従来の障害者雇用は知的障害や身体障害に限られていましたが、今は精神疾患も対象になっています。

この制度は、発達障害の当事者が働く上では、とてもいい制度だと私は思います。当事者にとってのメリットは前述の通りですし、企業の側にとっても大きなメリットがあります。つまり、発達障害の特性はあるものの知的レベルの高い従業員に、一般雇用より低めの賃金で活躍してもらえるからです。

対人トラブルに悩む人に伝えたい

前述しましたが、職場で対人関係のトラブルを起こしやすい人には、「まず、相手の話をちゃんと聞きましょう。話したいことがあっても、相手が話しているときにかぶせて話してはいけません。それがむずかしければ、特に上司が話しているときにはしゃべらず、黙っていなさい」と、アドバイスしています。

岩波明『医者も親も気づかない 女子の発達障害』(青春出版社)

残念なことに、いまだに日本では、やまとなでしこタイプが理想の女性像です。一歩下がって男性より前に出ず、陰ながらサポートする。このような振る舞いが、ASDにおいても、ADHDにおいても、発達障害の女性には難しいわけですが、それでも、世間にそうした理想があるということを最低限理解しておかないと、職場ではかなり不利に扱われます。

せめて、上司に反論しないように注意しましょう。特に、人前ではっきりと反論したら「アウト」です。この場合、上司は他の人の前で恥をかかされたと感じるわけで、恨まれ、後々まで尾を引くことも珍しくないでしょう。仕事をしている方は、このあたりは皮膚感覚でご理解いただけると思いますが、たいていの場合、これが日本の企業文化なのです。それから、ボスより決して目立たないことです。

その場に「薄く入る」ことがコツ

職場はひとつの部族のようなものであり、必ずボスがいます。そのボスより必要もないのに目立つのは得策ではありません。

コツとしては、その場にいるかいないか気づかれないぐらいに、「薄く入る」こと。特にADHDの人は声が大きく、普通にしているだけで目立つことが多いのですが、意識してその逆を演じてみましょう。

目立つだけで目をつけられてしまうというのは、日本の学校でも職場でも、変わらず見られる現象です。発達障害の特性を持っていると、周囲から浮かび上がりやすいので注意が必要です。

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