発達障害を抱える女性は、男性よりも生きづらさを感じるケースが多いという。なぜなのか。精神科医の岩波明氏は「女性として求められる役割が多い上、空気を読めないことで『女の子なのに』と責められてしまう。これはとてもつらいことだ」と指摘する——。

※本稿は、岩波明『医者も親も気づかない 女子の発達障害』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

窓から夕日を見ている女性
写真=iStock.com/Hakase_
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女子の症状は男子ほど目立たない

最初にお断りしておきたいのですが、人数の上で、男性よりも女性に発達障害が多い、という事実はありません。

明らかにASD(自閉症スペクトラム障害)は男性優位です。さまざまなデータがありますが、ASDについては7~8割以上が男性、あるいは9割が男性という報告もあります。ADHD(注意欠如多動性障害)は、以前は男性に多いとされていましたが、今ではそれほど男女差がないことがわかっています。数は多いとは言えませんが、「女性の発達障害」には独特の悩みがあります。

そのひとつは、「見逃されやすい」ことです。そのため発見が遅れがちです。ASDはそもそも女性は少ないため、これは特にADHDが中心の話になります。

ADHDの特徴である多動・衝動性は、幼少期や児童期の男子によく見られるものです。その特徴として、授業中にじっとしていられない、よくケンカをする、感情が爆発する、といったことがあげられます。このような症状によって、発達障害を抱えていることを周囲も気がつきやすいのです。

それでは、女性においてはどうでしょうか。もちろん、ADHDの女子に多動・衝動性がないわけではありません。基本的な症状は男性と同じです。しかしその程度は軽く、一般的に男子ほどは多動・衝動性が目立ちません。また筋力も男子ほどではないため、もし暴力的な行為があっても大きなトラブルに発展することはまれです。学校の先生も、きつく叱ることはないでしょう。