ところが、発達障害の女性の特性は、そうした「男性が求める女性の役割」とは正反対であることが多いのです。それが「女性なのに」と責められる原因です。結婚して妻や嫁、母など求められる役割が増えると、それが顕著になります。
段取り下手、遅刻癖、協調できない…
幼少期には見逃されやすい女子の発達障害。彼女たちの問題が顕在化してくるのは、多くが思春期に差しかかってからです。
通常の知的能力の持ち主なら、発達障害の症状があっても、本人の努力で対応できる範囲も少なくありません。多くの場合、小中学校あたりまでは、そこそこ乗り切れることが多いようです。
例えば、ADHDの特性により試験でケアレスミスを連発しても、問題を解くスピードが速ければ、そのぶん見直しに時間をかけることで修正がききます。しかし思春期以降は、しだいに勉強が難しくなり、対応が追いつかなくなります。その頃にはクラス内の人間関係も複雑になっています。しぐさや表情から相手の気持ちを読み取れないASDの人は、周囲から「変わった人」と扱われることも増えてきます。
ADHDの人も、衝動的で自己中心的な振る舞いが原因で孤立することがあります。また思いつきの発言が多く、人間関係を悪化させるきっかけになりやすいのです。
こうして社会の荒波にさらされるようになると、いよいよ発達障害の特性がはっきりしてきます。段取り下手でスケジュールが守れない、予定が狂うとパニックを起こす、遅刻を繰り返す、などです。あるいは、周囲と協調することができない、上司の指示に従えないなどの問題も見られるようになります。
発達障害の人の多くは、標準以上の知能を持っています。そのため、ある程度の業務はこなせるのですが、得手不得手は明らかです。社会人1~2年目で不適応を自覚して、精神科を受診するというパターンが目立っています。
「女性」の「日本人」は二重の苦しみ
発達障害というと、「空気が読めない」「相手の表情、しぐさを読み取れない。言葉のニュアンスがわからない」といった症状をイメージする方が多いようです。特にASDにはその傾向があります。
もともと日本人の会話は、物事をハッキリ言わずに雰囲気やニュアンスで伝えようとする傾向があります。アイコンタクトで暗黙の了解を求める、なんとなく「わかってるよね」で済ませる、会議やミーティングでは特定の人が口火を切るのを待ってから話す、などが典型です。上司が詳しい事情を説明せず、ただ「うまくやって」としか言わないことも珍しくありません。