米国の「韓国を交えたG11構想」に有頂天でもない

一方、アメリカのトランプ大統領からは「9月にアメリカで開かれるG7に韓国も参加しては」との申し出があった。韓国の他にロシア、インド、オーストラリアの4カ国を加え、G11にしたいとの構想である。

「韓国では歓迎ムード」という指摘もあるが、中央日報は「EUが反発している」「日本もよくは思わないだろう」「韓国はもてあそばれただけ」と言ったコラムや、「米国の一方的な決定で実現することができないことはG7結成以降の歴史が教えてくれている」と指摘する識者の記事を掲載するなど、国を挙げて喜んでいるとはいいがたい空気が漂っている。

トランプの狙いは韓国配慮ではなく中国への牽制

トランプが「G11」と言い出したのは、他でもない中国への牽制である。中国との対立姿勢を鮮明にしているトランプは、米国が主導する新しい経済同盟構想「経済繁栄ネットワーク」(EPN=Economic Prosperity Network)をブチ上げたという。脱中国を掲げ、かねてアメリカで排除の動きがあった中国製通信機器や、コロナ禍で明らかになった中国依存度の高い医療品供給の面で中国を排除し、新たな供給網を構築しようとするものだ。トランプは中国の「一帯一路」の向こうを張るEPNに各国を引き入れ、さらに輪をかけてG11会合を自国で開き、対中包囲網形成を強く印象付けたいとみられる。

このEPNは安倍総理が第二次政権発足直後に唱えていた「価値観外交」の理念と重なる部分がある。「価値観外交」は法の支配を尊重しルールに基づいて公平に経済成長を図るという「価値観を同じくする」国々との連携を強めるとの外交方針だった。

当の安倍総理がこのEPNそのものについて触れたという報道はないが、安倍総理は新型コロナ禍に覆われつつあった3月の時点で「付加価値の高い製品の生産拠点の国内回帰」と「付加価値が高くないものも生産拠点をASEANなどへ多元化する」と述べており、おそらくはEPNを主導するトランプと歩調を合わせて、サプライチェーンに関しては実質的な「脱中国」を表明して見せたのだろう。