家で過ごす時間が増えると、夫婦関係にはどのような影響があるのか。夫婦問題研究家の岡野あつこさんは「皮肉なことに、夫婦が一緒にいることが原因の相談が増えている。だが、非常時に白黒つけることは避けたほうがいい」という――。
白いベッドに横たわり、夜の間にスマートフォンをプレイするアジアの若い女性
写真=iStock.com/Pongchart
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「夫婦が一緒にいる」ことで増えたトラブル

新型コロナウイルスの影響で、最近はLINEのビデオ通話やSkypeを中心に夫婦問題の相談を受けている。一緒に過ごす時間が増えた夫婦は多いが、皮肉なことに、夫婦が一緒にいることが原因で生じるトラブルが増えている。

コロナ問題が起こる前は「お互いに忙しすぎて夫婦の時間が持てない」「生活時間帯にズレがあり関係がギクシャクしている」という理由から夫婦問題が生じるケースが大半を占めていただけに、今は真逆の展開に正直な話、戸惑うこともある。自粛生活がスタートしてすでに2カ月以上がたつものの、「夫婦が四六時中顔を合わせる環境に慣れる気配は一向にない」という話もあちこちで聞く。

世の中にコロナ離婚という言葉が広まり、定着しつつある今、こんな夫婦問題の相談が寄せられている。

※登場人物のイニシャルと年齢は変えてあります

家事を手伝ってくれていた母が来られなくなり…

【Case1】家事と夫へのストレスで体調不良になった

結婚して3年目のS美さん(32歳)は、4歳年下の夫とともに在宅勤務になった。コロナ問題が起こるまでは共働きで、夫婦関係はおおむね良好。多忙な娘夫婦のサポート役として、同じ沿線に住むS美さんの母親がときどき訪問して掃除や夕飯づくりなどの家事を手伝ってくれていたことも、円滑な夫婦生活の支えとなっていた。

ところが新型コロナウイルスの影響で、二人の関係は一変。高齢な母親が外出自粛で娘夫婦の自宅から足が遠のいたことで、初めての二人だけの生活がはじまった。S美さんは、今まで母親に任せていた家事をいざ自分ですべておこなうことになり、自分の家事能力があまりにも低いことを知り愕然としたという。「もともと掃除や片付けは苦手だし、料理のレパートリーも少ない。主婦業はプレッシャーもあって、いっぱいいっぱいになった」。夫のほうは、「俺は仕事に専念するから、家のことは頼んだよ」と、朝から自室にこもる日々。妻が家にいる安心感からか、夫は家事を手伝おうとはしなかったという。